豪華列車ロボスレイル紀行
”プライド・オブ・アフリカ”の名を持つロボスレイルは、南アフリカの行政を司る首都プレトリアを起点に走る世界最高峰の豪華列車である。
実業家で鉄道マニアだったロハン・フォスが、スクラップ同然の車両をオークションで落札した事がきっかけで、やがてアフリカ大陸に豪華列車を走らせるという夢が1989年に現実のものとなった。
19世紀のクラシカルでエレガントな趣きを残しつつ、快適な設備と一流のホスピタリティを兼ね備えたロボスレイルの名は、瞬く間に世界のラグジュアリートラベラーの間で垂涎の的となった。
目的地と趣向によって異なる複数のコースが用意されているが、中でも最も人気を集めているのはプレトリアとケープタウン間の1,600キロを2泊3日で走るコースである。
プレトリア市街の喧噪から少し離れた郊外にある、ロボスレイルステーションでのチェックインからこの旅は始まる。
スーツケースをポーターに預け、ゲスト専用ラウンジへと案内されるとウェルカムシャンパンと軽食のサービスが迎えてくれる。
プラットホームには、すでに準備を整え白煙を上げた蒸気機関車が停車していて、見ているだけでこれから始まる旅へのわくわくした気持ちが盛り上がっていくのを感じる。
客室を担当するホステスによって3日間過ごすことになるコーチに案内され、15時にプレトリアを出発。50キロ先のヨハネスブルグまでは蒸気機関車が牽引し、その後は電気機関車に切り替わってケープタウンを目指す。
最高時速は60キロ、本来移動手段である列車そのものが究極のエクスペリエンスと言う、豪華列車ロボスレイルの旅の幕が上がる。
ヒストリカルな雰囲気が漂う客室は想像以上に広く、二人で過ごすにも十分なスペースが保たれていて、ベッド以外にリビングスペースとして小さなテーブルと椅子が備わっている。
トイレとシャワーブース、洗面台はもちろん、クローゼット、冷蔵庫、エアコン、車内通話用の電話が備え付けられ、プライバシーが保たれており、快適に過ごすには十分な設備が整っている。天井横にはスーツケースが4つは入るであろう横長の収納スペースがあり、鉄道の旅の優雅さを感じさせてくれる。
クルーズ船とは異なり、豪華列車と言えども車両全体の設備は限られており、前方と後方にあるラウンジカーと、最後尾にあるオープンエアの展望車両、そしてほぼ中央部に連結されたダイニングカーが主だった施設。ゲストは乗車中のほとんどの時間を自分のコーチで過ごすことになる。
流れゆく車窓からの風景は鉄道の旅の醍醐味。プレトリア、ケープタウン間では南アフリカならではの雄大な自然景観はもちろん、スプリングボック、ピンクフラミンゴといった野生動物、延々と続く広大な葡萄畑の風景が車窓を流れ、乗客の目を楽しませてくれる。
夕暮れになると、車両最後尾のオブザバートリーと、デッキ前のカクテルラウンジに決まって乗客が集まり始める。遥か線路の向こうに沈みゆく夕陽と、ディナー前のアペリティフを楽しむ時間だ。ゲストは思い思いのカクテルを手に、互いに一日の出来事とアフリカの旅について語り合う。
続いて19時30分になるとディナーが始まる。ドレスアップしたゲストが一同にダイニングカーに集い、時間をかけてディナーを楽しむ。料理は前菜、メイン、デザートの3コースが日替わりで用意され、南アフリカをワインと共に頂く。スペースと設備が限られた電車内のキッチンで作られたとは思えないほど完成度の高い料理には、感動せずには居られない。
ロボスレイルでは、全ての食事に加え、ワインとシャンパン、カクテルを含んだ全ての飲料と、エクスカージョン、クリーニングも乗車代金に含まれたオールインクルーシブシステム。
ハウスワイン以外は有料といったクルーズ船やホテルが多い中、流石に世界一の豪華列車と言われるロボスレイルでは、数十種類にも及ぶワインとカクテルのリストが用意されているから驚きだ。
設備は最新とは言え、クラシカルなスタイルが特徴のロボスレイルは、時折車両自体が軋む音を鳴らしながら走るため、深夜はゲストが良く眠れるようにと、できる限り停車時間を設けるといった配慮がなされているのも気の利いたホスピタリティ。1車両に一人の専任スタッフが、乗車中のゲストのパーソナルな要望にも対応してくれる。また、ロボスレイルの旅では、一日に一つエクスカージョンが組み込まれており、プレトリア-ケープタウン間では、ダイヤモンドラッシュに湧いたキンバリーでのダイヤモンド採掘跡地ビッグホール訪問と5キロのトレッキング、小さな歴史遺産の街マジェスフォンテンを散策するプログラムが用意されている。いずれも南アフリカの歴史や文化に触れることができるロボスレイルならではのエクスカージョンだ。
ロボスレイルの旅は、ケープタウンとタンザニアのダル・エス・サラームを結ぶ6,000キロを15日間かけて走るコースが最も長く、ナミビア砂漠、ビクトリア滝、ダーバンを目指すコースがそれぞれ設定されている。
夢を乗せて現代まで走り続ける豪華クラシカル列車ロボスレイルの旅は、アフリカの旅を一層輝かしい生涯の記憶へと導いてくれることだろう。
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