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クラフトジンを求めて~個性的なジャパニーズジン~
2021.10.29
FOOD

クラフトジンを求めて~個性的なジャパニーズジン~

WRITTEN BY Masahiro.K, and HIROSHI.K

アマンプロからオリジナルファーム・ジンを造ったとのニュースが届いたのは2021年春のこと。
後にボトルが届き、味わってみると芳醇な南国の香りに包まれ、しばしアマンプロのビーチに思いを馳せた。

時はクラフトジンブーム。国内でも続々と蒸留所が新設され、今や120を越えるブランドが誕生していると言う。ジンとは、穀物を原料とし、ジュニパーベリーを使って造る37.5度以上の蒸留酒のことで、これに様々なボタニカルを加えて各ブランドはオリジナルジンを名乗る。
縛りが少なく、造り手の思いや個性が反映される自由なスピリッツとも言えよう。
そんなクラフトジンのことを知りたくなり、蒸留所を訪ねる旅に出た。

積丹スピリットを訪ねて

鮭漁の最盛期を向かえた頃、縁あって北海道積丹半島に誕生した、積丹スピリットを訪ねる機会に恵まれた。札幌市内から車で約2時間弱で、風光明媚な海岸線の風景が広がる積丹町にたどり着く。積丹の澄んだ海は積丹ブルーと称されるほど青く美しい。

そんな積丹の海が見渡せる小高い丘の上に建つディステイラリー積丹ブルー2020年に蒸留をスタートし、最初の商品である火の帆KIBOUをリリースしたばかり。
北海道の生命力に満ちた緑豊かな森林を想起させるアカエゾマツの香り、そして積丹産のバラエティに富んだボタニカルが織りなす芳醇で複雑な味わいで、まろやかな口当たりとキタコブシのほのかな甘みに加え、エゾヤマモモのスパイシーさとエゾミカンのほろ苦さが特徴だ。

伝統的なジンの風味を持たせて造るコアジンに、減圧蒸留によって北海道産ボタニカルの新鮮な風味を抽出させて造り出すボタニカルスピリッツをブレンドさせることによって生まれるジンは力強さと繊細さを併せ持つ。
使用するボタニカルの種類とクオリティがジンの個性となり、製造過程では漬け込む時間とタイミングが仕上がりに大きく影響するため最も気を遣うと言う。
北海道の厳しい環境の中で子孫を残そうとする植物の種子は、この地ならではの強い生命力を秘めている。
積丹スピリットでは、より北海道らしさ、積丹らしさを表現するために100種類にも及ぶ植物を自社栽培してジン造りに活かしつつ、豊かな大地の恵を未来に繋げる活動をしている。

多様性に満ちた植生の中、積丹スピリットがこの地でジン造りを挑戦するきっかけとなった一つがミヤマビャクシンというヒノキ科の樹木にある。
ジュニパーベリーの一種で、積丹の海岸断崖に自生するミヤマビャクシンは、冬は雪に覆われ、海からの激しい風にさらされる厳しい自然環境の中、岩肌に根を張って生き残ってきた生命力溢れる植物。
積丹スピリットでは、このほど3年かけて集めたミヤマビャクシンで造った試作品のブレンディングセッションを終えたばかり。
より積丹らしさを表現するブランドとして、初めてミヤマビャクシンを使ったブランドのリリースとのことで、こちらも今から楽しみだ。

厳しいが故に保たれてきた自然の恵みが凝縮する積丹半島は、世界に類のないジン文化の発信地であり、やがて日本を代表するクラフトジンへと進化する可能性を秘めた場所である。

陽が傾き始めたころ積丹を後にして札幌へと戻り、向かった先はBar一慶。
火の帆KIBOU“BOUQUETを使ったジントニック、そしてオリジナルマティーニを楽しみつつ世は更けていったのだ。

エシカル・スピリッツ「東京リバーサイド蒸溜所」を訪ねて

隅田川沿いの町「蔵前」は江戸時代に幕府が天領から集めた米を収蔵する「御米蔵」があったことに由来し、浅草橋や柳橋に接する東京の下町を代表する街。
80年代に両国に移転するまでは「蔵前国技館」があったことでも知られているが、今では「ものづくり」で個性的な文化を発信するエリアとして注目を集め、ニューヨーク・マンハッタンの対岸にあるイーストリバー沿いのブルックリンに擬えて「東京のブルックリン」とも呼ばれている。

昨年、そのお米と「ものづくり」に縁のある蔵前に、廃棄素材を原料としたクラフトジンを製造する再生蒸留ベンチャー「エシカル・スピリッツ」社の「東京リバーサイド蒸留所」がオープンした。
同社を訪ね、創業者の一人でCOOの小野さんから循環型社会とクラフトジンにかける熱い想いを伺った。
小野さんは27歳、ロンドン留学中にジンにほれ込み、醸造家など違うバックグランドを持つ5人で起業されたそうだ。

この蒸留所が原料として使うのは慶應元年創業の鳥取の酒蔵「千代むすび」の酒粕だ。日本酒造りの過程で生成され廃棄されてきた酒粕を再蒸留してクラフトジンを造り、その利益を酒蔵に還元して新酒製造費用に充てると言う循環型経済を目指して創業。
酒粕以外にもコロナ禍で販売が減少し賞味期限が迫った生ビールやチョコレート製造過程で廃棄されるカカオの表皮なども原料として使用するなど、ユニークな個性を持つベーススピリッツに徹底的に拘っているそう。
最近日本では多くのクラフトジンが製造されているが、まさにサステイナブル社会・エシカル消費を象徴するような新時代のクラフトジンと言えるだろう。ジンには法定の賞味期限や廃棄期限がないそうで、その意味でもまさに環境に優しいスピリッツだ。

一般的に「エシカル」と聞くと地球に優しい新しい価値観の実現と言う響きはあるものの、廃棄素材で味はどうなのかと思いがちだ。
しかし、同社では製造原料のみならず味にも徹底的にこだわり「飲む香水」と呼ぶほど香り高い良質なフレーバードジンを実現している。

イギリスで開催される酒類の品櫃を競う競技会「International Wine Spirits Competition」において、同社の「Last Episode Elegant」が本年度「Gold Outstanding(最高金賞)」を受賞した。
世界中から1,000ものエントリーの中で、わずか9製品のみが受賞できる狭き門で、日本からは唯一の受賞だそう。

蒸留所には屋上にフレーバーに使うボタニカルを育てる農園や、シンプルでお洒落なBarDiningStage」が併設されており、ジンに合わせたメニューを楽しむ事ができる。
蒸留器の横にあるイメージカラーが鮮やかなショップには、アトマイザーに入れられたジンが並び、華やかなアロマを嗅ぎながらまさにエレガントな「飲む香水」を買う感覚。
新時代の経営者の小野さんは「世の中にはまだまだHidden Gemが沢山ある、それを引き出すことで持続可能な循環型経済を実現したい」「ドラマ溢れるステージで新たな思考価値を象る」と語る。
華やかなジンの香りの向こうに、新しい社会価値と、かかわる人たちの幸せを実現するというクールなビジネスモデルを垣間見ることが出来た。

RECOMMENDATIONS

2021.10.31
JOURNAL

クラフトジンを求めて ~楽園の風 “アマンプロ ファーム ジン”~

自由に海外へ行けるようになったらすぐに訪れたいリゾートの1つ、アマンプロ。
アマンプロ・ファーム・ジンは、リゾート内のオーガニックファームで育てられたボタニカルの風味を生かして作られたオリジナルスピリッツ。

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