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La Dolce Vita Orient Express ~とろけるような列車旅をイタリアで~【後編】
2026.03.13

La Dolce Vita Orient Express ~とろけるような列車旅をイタリアで~【後編】

WRITTEN BY AYA.K

ローマを出発したLa Dolce Vita Orient Express(ラ ドルチェ ヴィータ オリエント エクスプレス)のキャビンで目を覚まし、まだ夜の明けきらないレストランカーへ。
夜明け前の静けさの中で、列車に乗っていることを忘れるような美味しい朝食をいただき、今日のスケジュールを確認する。キャビンに戻ると、La Dolce Vitaのロゴがデザインされたエクスカーション用のトートバックとスケジュールがセットされていた!
午前940分、列車はサンタ ルチア駅に到着。そう、旅の2日目の目的地は、運河に囲まれた美しい街、“水の都”ヴェネチア。

ヴェネチアはラグーナに浮かぶ計177の島が400を超える橋で結ばれた街だ。到着時、橋は景観のアクセントだと思っていたのだが、実は美しいアーチを描く橋こそがそれぞれの島に住んでいる人の生活を成立させるためのものと知って驚いた。本来は島々がつながっていなかったことを象徴するのが、教会の数。『それぞれの島で祈りをささげられるように僅かなエリアに140近い教会が存在することが、そのことを証明しているのよ』と、地元出身のガイドに教えてもらった。再び街を歩くと、それまで観光地としてしか見ていなかった場所に人々の営みが映し出され、より深い魅力を感じるようになった。

到着時に降っていた雨は数時間ヴェネチアの町を濡らしていたが、午後になると太陽が顔を見せるように!日差しが反射した運河での移動は“アドリア海の女王”と呼ばれるにふさわしい美しさと威厳を感じるひとときとなった。

そしてここヴェネチアには、20264月にオリエント エクスプレスの2軒目のホテルとなる「Orient Express Venezia(オリエント エクスプレス ヴェネツィア)」が開業予定だ。今回は残念ながら外観を見るにとどまったが、二つの運河が合流するカンナレージョ地区(セスティエーレ)に佇むこの宮殿ホテルは、1436年に建てられたパラッツォ・ドナ・ジョヴァンネッリを修復・改装したものだ。
ドゥカーレ宮殿を思わせるモチーフを備え、精緻に作り込まれたゴシック窓で飾られた壮麗なファサードは、ゲストを迎える日を静かに待ちわびているように見えた。開業後は、ローマとヴェネチアを結ぶオリエント・エクスプレスの列車旅が、よりシームレスで、いっそう物語性に富んだものになるに違いない。

ヴェネチア滞在を終え、夕暮れと同時にサンタ ルチア駅を出発。夕食を楽しむべく、レストランカーへ!ラ ドルチェ ヴィータ オリエント エクスプレスでは、ミシュラン三ツ星のシェフ・Heinz Beck(ハインツ・ベック)監修のメニューが楽しめる。実は私、ハインツ・ベック シェフの大ファン!20年ほど前、アジアのとある都市で開催された世界中のミシュランスターシェフが集まるイベントに招待されたシェフの一人が、ハインツ・ベック シェフだった。多くの星付きのシェフの料理の中で、彼の料理が最も印象に残り、一瞬で虜になってしまった。まさか、こんな形で“再会”できるとは…!
料理は、五感で楽しめる美しくおいしいフルコースと素晴らしいイタリアワインとのマリアージュ。このメニューを生み出したハインツ・ベック シェフにはもちろん、それを列車の中という状況で造りだしているキッチン・レストランチームの努力に心から感謝と敬意を感じながら堪能させていただいた。

翌朝、目が覚めると早いもので最終日。この日の朝はオムレツだけでなく、アボガドトーストも注文し、最後の冒険へ準備を整える。

この日の目的地はイタリア中部・トスカーナ州の都市・シエナ。最寄り駅のグロッセートで下車し、そこから約1時間、ワイン畑を横目にしながらのドライブを経て到着したのは、中世にタイムスリップしたかのような美しい街だった。日本での知名度はそれほど高くないシエナだが、元々金融業で栄えた街で、一時期には隣のフィレンツェを凌ぐほどだったそうだ。荘厳なシエナ大聖堂や、世界で最も美しい広場とも言われているカンポ広場などにかつての栄華を感じる。

そのカンポ広場で、毎年7月と8月に行われるのがパリオと呼ばれる競馬。シエナの中心部にある17の区対抗の競馬で、まさに各区の熱意と結束、何よりプライドをかけた真剣勝負。地元のガイドが言った『130秒の戦いに1年をかける』という言葉が過言ではないほどの一大イベント。
今回はラ ドルチェ ヴィータ オリエント エクスプレスの乗客だけが特別に通される地元の名士の邸宅からその広場を見下ろし、パリオの熱狂ぶりに思いを馳せた。ちなみに数年前、0076代目ジェームズ・ボンドでおなじみのダニエル・クレイグもこの場所から同じ景色を眺めたそう。
かつての繁栄、その後の困難。深く長い歴史を経て今なお美しい都市・シエナ。時が止まったような街並みを散策したひとときは、旅のハイライトの一つとして心に刻まれた。

シエナの街を後にし、グロッセート駅に戻ってくると、ちょうどラ ドルチェ ヴィータ オリエント エクスプレスの車両がホームに戻ってくるところだった。夕日が反射した美しい車体の優雅な入線風景は、旅の最後にもらったサプライズギフトのような瞬間となった。

ローマまでは、ワゴンバーで楽しむもよし、自分のキャビンで車窓を眺めるもよし…。そうこうしているうちに列車はオスティエンセ駅に到着。
一昨日出発したゲスト専用のラウンジで旅の余韻に包まれながら荷物が車両から専用車に積み込まれるのを待ち、再びホテル、Orient Express La Minerva(オリエント エクスプレス ラ ミネルヴァ)に戻ってきた。

豪華列車での優雅で快適な旅は、車内での時間、美味しいお食事、各地での特別なひとときと、まさにLa Dolce Vitaの名にふさわしい、甘くとろけるような素晴らしい体験となった。だが振り返った時に最も鮮明に覚えているのは、一緒に旅をしてくれたクルーたちのおもてなしかもしれない。つかず離れずの抜群の距離感と、細部にまで目が配られたサービスは、まさにラグジュアリークルーズトレインの名にふさわしいものだった。

そんなラ ドルチェ ヴィータ オリエント エクスプレスの旅。世界的に有名なレストランの格付けの基準を借りるなら、この列車に乗車するためにわざわざイタリアに行く価値がある…と言ったところだろうか。ぜひともそんな甘美な列車での時間を体験していただきたい。

今回、1月にイタリアに行くと言って多くの人に眉をひそめられた。冬なので当然寒く、雨の確率も高い。観光に適した季節とは言い難いことは分かっていたので内心ドキドキしていたのだが、個人的には、特にローマ訪問にはおすすめできる季節だと感じた。
もちろん、新緑にあふれ、地中海の太陽が降り注ぐ季節は美しいだろう。けれど、葉の落ちた街路樹が並ぶ街中、空を覆う厚い鈍色の雲、冷たく張り詰めた空気はローマの厳かさや敬虔さをいっそう際立たせ、この都市の魅力を深く感じることができた。
ぜひ、冬の季節も選択肢のひとつとして心に留めてほしいと感じる旅だった。

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