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ベルモンド ブリティッシュ プルマンの旅
2025.10.07
CRUISE & TRAIN, DISCOVERLY

ベルモンド ブリティッシュ プルマンの旅

6月初旬にも関わらず、今年のロンドンはすでに汗ばむ陽気に包まれていた。

ベルモンド ブリティッシュ プルマンに乗車すべく訪れた朝のヴィクトリア駅は、通勤を急ぐビジネスマンで混み合ってはいたものの、2番ホームだけはまるでタイムスリップしたかのような独特の雰囲気に満ちていた。
ロカビリーファッションに身を包んだ女性シンガーのオールディズによって出迎えられ、プラットフォームの一角にあるベルモンドのプライベートラウンジにて、ウエルカムドリンク片手にチェックインを済ませる。

ホームにはすでにブリティッシュ プルマンのダークブラウンとベージュの美しい2トーンの車体が横たわっていた。

ブリティッシュ プルマンは、1920年から30年代に実際に活躍した車両を熟練の職人技によって修復され現代に蘇らせた列車の名称で、ロンドンを起点にイギリス各地を日帰りで運行している豪華列車である。
1車両あたり20席から26席で構成された車両は全11両で、各車両には2人用テーブル席と扉が付いた4人掛けのコンパートメントが設けられている。食堂車やバーといった車両はなく、乗客は事前にアサインされた指定席にて終日過ごすことになる。
Perseus(ペルセウス)は、王室御用達の列車として重宝され、1965年にはウィンストン・チャーチルの葬送列車としても使用された車両。Zena(ゼナ)は、アガサ・クリスティを主人公にした映画「アガサ」の撮影で実際に使われた車両で、Gwen(グウェン)は、かつてロンドンとブライトン間を行き来した食堂車であり、1950年代には、エリザベス女王も利用していたとのこと。ヴィクトリア様式をふんだんに取り入れた全ての客室は格式高く、英国王室ゆかりの列車であるということが随所から伝わってくる。

2つとして同じ車両はなく、それぞれが持つヒストリーとエピソードに相応しい名前が付けられていて、由来を聞きながらそれぞれの車両を巡るのも楽しさの一つだ。
真っ白な制服に身を包んだスチュワートに導かれ、チケットに記載された車両、Phoenix(フェニックス)に乗り込んだ。
フェニックスは当初レインボーと呼ばれた1927年に製造された車両で、1936年まで一等客車として使用されていたが火災で消失。後に完璧なまでに再建され蘇ったことからフェニックスと名付けられ、以来王室に人気でとりわけエリザベス女王母后のお気に入りだったとのこと。不屈の精神と優雅さの象徴としてのブリティッシュ プルマンは、当時の雰囲気をそのままに細部に至るまで豪華さと冒険心に満ち、大英帝国の雅やかな世界へと導いてくれた。案内されたテーブルには、シルバーウェアのカテラリーとウィリアム・エドワーズのボーンチャイナが並べられ、ブリティッシュ プルマンの紋章があしらわれたクリスタルグラスに、チプリアーニ縁のベリーニカクテルが注がれてイマーシブジャーニーが始まった。

出発日によって異なるコースが用意されている中、今回乗車したのはヒストリック・バースと名付けられた、イギリス南西部の町バースへの旅。ブリティッシュ プルマンは、定刻の940分になると汽笛を鳴らし、目的地バーススパ駅を目指してゆっくりと動き出した。
当時の雰囲気を残すべくクラシカルなデザインに拘った車内にエアコン設備はなく、コンパートメント上部の窓を開けつつ初夏の風を感じながらの移動となった。3コースのブランチがはじまり、プロセッコを手にした専属スチュワートが各テーブルを回って空いたグラスにベリーニを注ぎ足す。やがて列車はロンドン市内の喧噪を離れ、車窓からの眺めはのどかな田園風景へ。これほど時間をかけてブランチを食した記憶はなく、料理とサービス、流れる景色と雰囲気を楽しみながらのバーススパ駅までの3時間半はあっという間に感じられた。

バースは南西イングランドの丘陵地帯にあり、18世紀のジョージアン様式の建物が並ぶ風情ある町で、とりわけ有名なのが町の中心にある古代ローマの公衆浴場跡であるローマンバスと壮麗なステンドグラスが美しい世界文化遺産の一つバース修道院。バース石と呼ばれる蜂蜜色の石が敷き詰められた旧市街の通りにはオシャレなカフェやレストラン、雑貨屋などが軒を連ね、3時間ほどの停車時間では物足りないほど。地図を片手に自由散策を満喫した後、駅に戻り待ち構えていたブリティッシュ プルマンに再び乗車。1550分、ロンドン・ヴィクトリア駅に戻る帰路の旅へと出発した。冷えたヴーヴクリコが振舞われ、ディナーには料理に合わせてチョイスされたワインと共に5コースが用意されていた。ゴートチーズのムースとメインの鱒のコンフィにはローカルの白、チョコレートクリームのデザートとチーズセレクションにはポートワインを薦められ、料理と合わせて楽しんだ。ロンドンの一流レストランにも引けを取らない料理の数々に、ブリティッシュ プルマンが美食の旅と呼ばれるに相応しいということを体現した思い。

ディナーを終えても6月のイギリスの陽は高く、到着までの時間は英国伝統のトレゴスナンのアールグレイを嗜みながらゆっくりと過ごした。気分はすっかり”英国紳士”、ロンドン市街が近づいて来た頃にはワインともてなしに酔い痴れ、心地よい疲れと共に夢心地になっていた。
定刻通りの午後730分にヴィクトリア駅に到着し、土産として頂いたギフトを手にフェニックスの席を後にした。当時の様子を想像しながらのノスタルジックで優雅な旅だった。

ブリティッシュ プルマン乗車に際してベルモンド カドガンに滞在すれば、シームレスかつ一層パーソナルに富んだサービスが約束されるはずだ。

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