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エジプト ナイル川紀行【前編】
2024.08.05
ACTIVITY, DISCOVERY

エジプト ナイル川紀行【前編】

”Without the Nile, there is no Egypt” 「ナイルがなかったらエジプトが存在することはなかった。」
ナイル川クルーズを含む12日間の旅を通じて、この言葉が意味するところを理解することとなった。

本格的な夏の酷暑を迎える前の5月中旬、エジプトの玄関口カイロ国際空港に降り立つと、雲一つない快晴の空に加えて、早朝ながら気温は高く空気が乾燥しているのを感じた。
到着早々に投宿したのはナイル川の畔に建つ高層ホテル、フォーシーズンズ ホテル カイロ アット ナイル プラザ。21階のリバービューの部屋からは、ナイル川の流れと川に浮かぶゲズィーラ島とローダ島、そしてカイロの街並みが一望でき、また、遠くビルの谷間からはギザのピラミッド群も微かに眺める事が出来た。
カイロ市内の見どころを回るには絶好のロケーションでもあり、3日間はナイルプラザを拠点に主要観光施設に立ち寄った。

カイロは”600のモスクと1000以上のミナレット(尖塔)を擁することから、”千の塔の都”と呼ばれるほど街中が歴史遺産に溢れ、とにかく見どころが多い。
イスラム地区ではカイロのランドマークとも言えるムハンマド・アリ モスクとスルタン・ハサン モスク、そして中東最大のバザールと言われる、ハーン・ハリリを散策。
もう一つのカイロ歴史地区であるオールドカイロは、カイロ発祥の地というだけあって、エジプトの歴史を肌で感じることが出来る街。今なお1,000万人を超えるコプト教徒によって支えられているエリアで、聖ジョージ教会、聖母マリア・コプト教会、エル・ムアッラカ教会など、一見イスラムの国に来ていることを忘れそうな町の様子を見て回った。

見どころ満載のカイロにあって、一番の目的はやはりピラミッドを見ることだった。ナイル川を渡って最初に向かったのはサッカラ。カイロの喧騒を離れたナイル川西岸は、思いもよらず一帯砂漠の風景が広がっていた。ここから西はウェスタンデザートと呼ばれサハラ砂漠の東端にあたり、オアシスを除けば数千キロに及ぶ無人の不毛地帯が続く。国土の90%以上が砂漠に覆われているということを知らされ、過酷な自然環境だったであろう古代の様子に想像を働かせつつサッカラのピラミッドコンプレックスを訪れた。

最初に目前したのは、紀元前2650年前後に造られた最古のピラミッドとされるジェセル王の階段ピラミッド。青空に映えるコブラの壁越しの階段ピラミッドは壮観で、周辺には形状の異なるいくつものピラミッドが点在し、周辺一帯はエジプト史上最大規模かつ最長期間のネクロポリスだったとのこと。今尚毎年のように歴史的な発見が相次いでいる場所でもあり、考古学者の案内で広大な遺跡を興味深く散策した。

そして、サッカラから10キロほど離れたギザへと移動し、3大ピラミッドのクフ王、カフラー王、メンカウラー王のピラミッド群とスフィンクスと対面。

クフ王のピラミッドでは、幸運にも内部へと入る事が出来た。腰を屈めないと通れない狭い通路と階段を上り、熱気と湿度による息苦しさを感じながらも、玄室と呼ばれる最も深い場所にたどり着いた。ピラミッド自体は石灰岩を用いているのに対し、この空間だけは赤色花崗岩が使われ、アスワンから切り出したものをナイル川を活用して運んできたとのことで古代エジプト人への知恵と創造力への感心は深まるばかりだ。

高さ146メートルで底辺の長さは230メートル、平均2.5トンの石を230万個積んで出来ているということを聞くと、想像の範疇をはるか越えて気が遠くなるのを覚えた。
4500年前の古代エジプト人が、一体どうやって造ったのか。人類史上最大の建造物であり、現代の技術を以てしても正確な工法について解明されていないという謎に惹きつけられる。
現在まで発見されているピラミッドは138基で、それらすべてがナイル川西岸にあることが確認されている。ピラミッドは王墓だったという説が有力とのことで、日の沈む場所が相応しいと考えたのだろうか。

カイロ滞在中のもう一つのハイライト、カイロ考古学博物館では、ツタンカーメンの黄金のマスクと対面。副葬品の一部として、ツタンカーメンの王座、アヌビス神の厨子も見ることが出来たものの、展示物は1922年11月26日当時に発見されたツタンカーメンの財宝と呼ばれる5,000点もの副葬品の一部にしか過ぎず、そのほとんどは100年間公開されることなく保管され続けてきたとのこと。そして、オープンを控えたグランドエジプシャンミュージアム(大エジプト博物館)では、すべての副葬品が展示される予定とのこと。
9つのピラミッドを一望できる9ピラミッヅラウンジ、そして3大ピラミッドを間近に見ることが出来るマリオットメナハウスでランチを楽しんだあと、ソフトオープニング中のグランドエジプシャンミュージアムにも立ち寄ることが出来た。

ギザのピラミッド群のほど近くに完成したグランドエジプシャンミュージアムの外観は、ドラマチックとも言える近代的かつ巨大な建築物で、エントランスに置かれた巨大なラムセス2世の石像とともにスタッフが出迎えてくれた。
総床面積50万平方メートル博物館は世界最大級で、10万点余りのコレクションが収蔵されることになっていると言う。近年サッカラとルクソール近くの「黄金都市」から発掘された250体ものミイラや出土品の一部を含めた搬入はすべて終えてグランドオープンニングの日を待つのみとのことで、今からオープンが待ち遠しい。
砂漠を風景を後にして、ナイル川の穏やかな流れに包まれた活気溢れるカイロの街に戻った。

カイロを離れる前に訪れたナイル川に浮かぶローダ島にて期せずしてナイロメーターなるものを初めて目にし、興味を惹かれた。かつて定期的に氾濫していたナイル川で、洪水を事前に予測する為の水位を図るメールの役割を果たす施設との説明を受け、ナイル川に沿った20か所ほど発見されているナイロメーターの中では最も古いものとのことだった。
ファラオの時代から氾濫を繰り返してきたナイル川は、流域に暮らす生命にとって時に甚大な洪水被害をもたらしたものの、一方では乾いた台地に潤いを与え、肥沃な土地が育まれたことによって高度な文明を形成することが出来た。適度な洪水は農業にはプラスに作用し、洪水が起こらない年は飢饉に見舞われたとの話で、古代よりナイル川の水量の変化を予測することがどれだけ重要なことだったかがうかがい知れた思い。

そして現代では、エジプト総人口の約半分が、カイロからアレキサンドリアにかけてのナイル川デルタに暮らしていると言う。カイロに着いてから見聞きしたナイル川に纏わる一連のストーリーによって、ホテルのテラスから見るナイル川の様子は最初と比べて一層興味を掻き立ててくれる。ナイル川越しに沈み行く夕陽を眺めながらカイロでの滞在を終えたのだった。そして、翌朝カイロを離れ、ナイル川の上流900キロにあるナセル湖のほとりの町、アブ・シンベルへと向かった。

エジプト ナイル川紀行【後編】 2024年9月1日公開予定

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