旅の延長線にある一杯|Offbeat
2026年3月、ウコバレーにあるカサ デ ウコを訪ねるために久しぶりにアルゼンチンの地に降り立った。メンドーサに向かう前泊先として、自分の中ではすっかり定着したパラシオ ドゥオ パーク ハイアット ブエノスアイレスにチェックイン。初めてブエノスアイレスに来た時に泊まって以来一目惚れした美しいホテルである。
当日は日曜日だったこともあり、サンデーブランチの真最中で中庭ではホテルのシェフがアルゼンチンの名物料理”アサード”を焼き上げていた。晴れ渡った空の下、ボデガ・サレンタインのマルベックと共に舌鼓を打った。長距離移動の疲れを癒してくれる、幸運な午後のひとときとなった。
翌朝、ホテルからほど近いホルヘ・ニューベリー空港を発って1時間50分でメンドーサ空港に到着。更に車で2時間かけてカサ デ ウコへとたどり着いた。ホテルの敷地に入ったことを示すゲートからホテルエントランスまでは数キロ離れていて、左手にワイナリーを眺めつつ広大な葡萄畑を通り抜けてホテルへと向かう。いつ来ても変わらない風景が広がっていた。
カサ デ ウコに初めて訪れたのは2016年の収穫真っ只中のこの季節だった。スペイン語で”ウコの家”と名付けられた17室のホテルは、周辺の自然環境とも相まって何とも居心地よく感じられた。一年を通じて晴天率がとにかく高く、南アンデスの美しい山並みと見渡す限りの葡萄畑の風景はまるで一枚の絵画のように美しく、わずか3泊の滞在だったにも関わらずたちまち虜となった。
そしてこの場所に、ご縁あって小さな葡萄畑を所有することになり、ワイナリーと組んでのワイン造りをスタート。
2017年に“Offbeat”と名付けた最初のヴィンテージをリリースした。
作付けの90%がマルベックというこの地で、我々が選んだ畑はカベルネフランが植えられた一画。以来、10年近くカベルネフランを主要品種としたブレンドワインを造り続けている。
何故カサ デ ウコなのか?とよく尋ねられるが、一言でいえば、”恋に落ちた”という表現がしっくりくる。
今回も一部収穫作業を手伝いつつ、摘んだばかりの葡萄の房を足で潰す昔ながらのワイン造りの工程を体験。
そして、恒例の”Asado in the Vineyard”ということで、葡萄畑の中央にセットされた屋外ダイニングにて、アルゼンチン伝統のアサード料理を堪能した。
私達にとって馴染みのサシが効いた肉をさっと焼くスタイルに対して、アサードは赤身肉を炭と薪を使って何時間もかけてじっくり火を入れて焼き燻すのが特徴だ。炭の香りを纏った肉料理はフルボディの赤ワインとの相性が抜群で、この地でマルベックが長らく愛されて来た理由が良く分かる。
ウコバレーを取り囲む南アンデス山脈の稜線が、はっきりと際立って見えるのは、この辺りの空気がいかに澄んでいるかの現れである。
この日も最高の天気に恵まれ、季節は初秋ながらも汗ばむ陽気の中、アサードのフルコースをカサデウコのマルベック、そしてカベルネフランのOffbeatとのマリアージュを楽しんだ。「アサードを食べてワインを飲めば皆幸せ」アルゼンチン流に習い、笑い、語らい合った思い出に残る素敵な時間となった。
ワインの方向性を確認するブレンディングセッションは、今回の滞在に際してのもう一つのミッションだった。カベルネフラン、マルベック、プティベルド、カベルネソーヴィニヨンをそれぞれの配合を変えてのアッサンブラージュを試し、香りと風味を確認する作業である。
ワイナリー2階のラボにて、ワインメーカーGustavo氏のレクチャーと手ほどきによるセッションを実施。シリンダーとペンを交互に持ち替え、感覚を研ぎ澄ませつつ何度も試し、徐々に好みの方向性を絞っていく。「樽熟成を経た時の状態をイメージするように」とのアドバイスだったが、到底その領域に達しているはずもなく。とは言え、この工程に関われることこそが、ワイン造りの造醍醐味でもある。さて、樽熟成を経た2025年ヴィンテージの出来栄えは如何に…。
カサ デ ウコにでは、既存の葡萄畑を区画販売するユニークなプログラムを実施していて、購入するとプライベートヴィンヤードオーナーとなる。
葡萄品種はもちろんのこと、生産本数や製造方法もオーナー裁量によって自由に決めることができるため、販売を目的とした所有から、趣味としての所有まで、世界各国に在住の様々なオーナーが集っている。今回の滞在では、偶然同じタイミングで滞在していたアメリカ人オーナーとの出会いがあった。ペンシルバニアから来たJuanは自分のワインを造るのが長年の夢だったと言い、ビジネスで現役を退いた後、カサ デ ウコで葡萄畑を所有してワインを造り始め、全米で自ら手がけた販売しているとのことだった。
「何故カリフォルニアではなく、カサ デ ウコなのか?」との問いかけに対し、彼の答えも”Fall in love for this place”だったのが印象的だった。
日本からでは遥か遠く離れた場所とは言え、ヴィンヤードが縁で決まって足を運び、泊まる場所があるというのは何とも有難い。過去の滞在では”Beyond Casa de Uco”としてをいくつも観光地を見て回った。
エル・カラファテでは世界自然遺産ペリト・モレノの氷河を目前にし、南米のスイスとも呼ばれるバリローチェでは、パタゴニアの絶景の中でトレッキングを楽しんだ。チリでアタカマ砂漠、ボリビアのウユニ塩湖とティティカカへの旅もブエノスアイレスが起点となった。
南米大陸はとにかく広く、魅力に富んだ場所である。カサ デ ウコとの繋がりによって、この先どれだけの旅の出会いがあるかもしれないと思うとわくわくしてくる。
RECOMMENDATIONS
Oh My カサ・デ・ウコ!
アルゼンチン、メンドーサのカサ・デ・ウコは、今まで経験したワインリゾートの中で最も自分にとって相性が合う理想の一軒なのかもしれない。
地球の息吹を感じるパタゴニアの旅
パタゴニアとは、南米大陸の南緯40度以南のアルゼンチンとチリに跨る110万平方キロメートル(日本の国土の約3倍)を指し、その多様な自然と魅力を一言で語るにはあまりにも広大だ。

