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ただ、過ゆく時を愉しむ – ガンツウでめぐるせとうちの旅
2021.04.26
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ただ、過ゆく時を愉しむ – ガンツウでめぐるせとうちの旅

WRITTEN BY AYA.K

「せとうちの海に浮かぶ、ちいさな宿」

700以上の島々と7,230kmにも及ぶ長い海岸線を有する瀬戸内海。おだやかな気候と島々が織りなす美しい景観は、日本人としてどこか懐かしい気持ちにさせてくれるものだが、近年では多くの外国人観光客をも魅了している。
そんな瀬戸内海でとれる青色の小さなイシガニの愛称を冠した「ガンツウ」。
乗船する方にも、また地元の方々にも長く愛されるように、そしてせとうちの伝統・文化・自然を楽しんでもらえるようにという想いを込めて名付けられたというガンツウに乗船してみた。

季節ごとの移ろいゆく瀬戸内海の風景と一体となり「ただ、過ぎゆく時を愉しむ」。
そんなガンツウのコンセプトを堪能すべくデザインされた美しい船内。
木の香りに包まれた空間の中でも特に設計者・堀部安嗣氏のこだわりが感じられる縁側でウェルカムシャンパンをいただき、2泊3日の漂泊の旅がスタートする。

旅の醍醐味を感じられるのはやはり食。
せとうちは食の宝庫といわれ、特に魚介類や柑橘類は知る人ぞ知る産地が点在している。
食を通じて、せとうちの四季を五感で味わうのもガンツウの愉しみ方のひとつ。
食事場所としてはダイニングルームと鮨カウンターがあるものの決まったメニューはなく、その日の食材を見せてもらいながら、好きなものを好きなように調理していただくという、なんとも贅沢なスタイル。
一流の食材を駆使した本格的なメニューから、素材を活かしたシンプルな定番メニューまで、気の向くままに楽しめるようになっている。

ガンツウは東回り・西回り・中央航路と、様々な航路を季節ごとに提案しており、その行く先々でせとうちの美しい島々の歴史や文化、そしてささやかな日常に触れることのできる船外体験が用意されている。
エレガントなデザインのテンダーボートに乗ってのアクティビティは、まさにガンツウならではの特別なひとときだ。

私が乗船したのは東回り航路で、最初の船外体験は直島。
かつて銅の精錬により排出される亜硫酸ガスにより木々が枯れ「ハゲ山の島」と称された直島は、1985年に「自然と歴史、現代アートの融合のなかで、人間の営みを見つめ直す空間」をコンセプトに手掛けられたプロジェクトにより世界的なアートの島へと変貌を遂げた。
そんな直島への到着後は多種多様なアートを感性の趣くままに楽しめるよう、決まったプログラムはなく、それぞれが思い思いに美術館や点在する家プロジェクトを堪能できるようになっている。

 

午後に訪れたのは本島。
潮の流れが速いこの島の周辺では、腕利きの船乗りが多く育ったことから、戦国時代には塩飽水軍が活躍。信長、秀吉、家康の3人の天下人に重用され、自治を許されていたこの島は江戸時代には海運で栄え、今も歴史情緒あふれる文化財の宝庫として知られている。
重要伝統的建造物群保存地区となっている街並みには塩飽大工が手掛けた建物が軒を連ね、かつての繁栄を感じさせる。時がたった今も当時の面影を残す街と、そこに暮らす人々のささやかな日常に触れる貴重な時間を過ごさせてもらった。

最終日、下船前に訪れたのは鞆の浦。
広島県福山市、沼隈半島の先端に位置する鞆の浦は「潮待ちの港」として江戸時代に栄えた町で、その頃から残る常夜燈や寺社・町家が大切に保存されている。
早朝にこの町を訪れ、急な坂道を登り切った高台から自分が乗船しているガンツウと、そのガンツウを抱くせとうちの景色を眺めるという贅沢を味わう。
その景色はまさに息をのむほど美しいものだったのだが、それもそのはず・・・ここはまさにガンツウのイメージ写真の撮影ポイントとして選ばれた場所だったのだ!

船内でも豊かな時間を過ごせるよういろいろな施設やアクティビティが準備されているが、その中でも是非体験していただきたいのが和菓子のふるまい。
奈良の「樫舎」・喜多誠一郎氏監修による和菓子を目の前で作ってもらい、日本茶・抹茶と共に堪能できるプログラム。
和菓子を生み出す繊細な手さばきが目の前で見られる貴重な体験はガンツウならでは!

もちろんガンツウがかかげる「ただ、過ゆく時を愉しむ」を追求するのもひとつ。

4タイプある客室はそれぞれユニークな特徴や設えが施されているが、どの客室のどの場所からも快適に景色を楽しめるように計算し尽くされている。あまりの快適さに、部屋での大半の時間をソファールームでくつろいでいた。
自室から流れる景色を堪能できるのはまさに【せとうちの海に浮かぶちいさな宿】ならではの醍醐味だ。

客室だけでなく、パブリックスペースでも同じようにくつろいだ時間を過ごせるのはガンツウのおもてなしのなせる業かもしれない。
アンドレ・ギャニオンのめぐり逢いが流れるラウンジから眺めた美しいせとうちの景色は、振り返ってみれば最も忘れがたいガンツウ思い出と言っても過言ではない。
アクティブに愉しむもよし。何もしない贅沢を愉しむもよし。
そんな多彩な選択肢を提供してくれるガンツウの旅。多くの方がリピートしてしまう理由が少しだけ分かった気がした・・・