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日本オイスター紀行【前編】
2021.06.21
FOOD, DESTINATIONS

日本オイスター紀行【前編】

WRITTEN BY Naomi.T, Mami.H Special Thanks: Aki Tsuboi (Oyster Activist)

Do you like Oyster?

バンクーバー、シドニー、ニース、ケープタウン、ボストン、ニューヨーク旅先… 旅先で新鮮なオイスターが食せるレストランがあると聞けば、駆け込んでいたのが懐かしく思える今日この頃。
オイスターには何ともゴージャスで魅惑的な響きがあり、世界中で愛され笑顔を創る共通言語とも言えるキーワードそのもの。
近年、日本各地でブランドオイスターが続々と誕生していることを知り、それならばと2021年春から初夏にかけて至高のオイスターを求めて旅に出た。
“All need is Oyster” 旅の目的地は、オイスターそのもの。日本オイスター紀行と題し、牡蠣が放つマトリクスな世界を旅先の魅力と共にお届けします。
今回は前編として、能登と伊勢志摩を訪問した際の様子をご紹介します。

能登・宮本水産の一年を通じて生で味わえる真牡蠣と岩牡蠣

「能登はやさしや土までも」とは、風土や人々の素朴さを表す古くから能登に伝わる言葉である。

石川県能登半島の東岸に位置する七尾湾は、入り組んだ地形と能登島に包み込まれた穏やかな内海で、景色を見ているだけでホッとする心持ちにさせてくれるのどかな場所だ。

そんな七尾湾は、能登牡蠣として知られる日本海側有数の牡蠣生産地。半島からいくつも川が流れ込み、山林の養分を多く含んだ水は良質なプランクトンを増やし、牡蠣がよく育つ絶好の漁場として知られている。

この辺りで牡蠣と言えば冬が旬というイメージがあるが、忘れてならないのが夏に旬を迎える岩牡蠣。

一般的に真牡蠣は11月から4月、岩牡蠣は6月から9月が旬とされ、海のミルクと言われる真牡蠣に対して、岩牡蠣は海のチーズとも表現され、身が大きくプリップリで濃厚な味わいが特徴。
真牡蠣は秋から産卵の為に栄養を蓄え、春に一気に産卵し産卵後は身が細って味が落ちてしまうが、岩牡蠣は一度の産卵量が少なく、何度かに分けて産卵することによって栄養を保ったまま成長するため、夏に美味しくいただけるという理由だ。

能登で岩牡蠣と言えば、漁師や海女さんが素潜りで獲る天然ものが一般的だが、今回訪れた宮本水産は、真牡蠣と岩牡蠣の両方の養殖を行う全国でも珍しい生産者である。

訪れた6月初旬は、シーズンがちょうど真牡蠣から岩牡蠣に変わる絶妙なタイミングで、両方を生で頂けるという幸運に恵まれたのだった。

一年で食べ頃を迎える七尾湾の真牡蠣は、小ぶりながら旨味は濃厚で、生でも甘味とミネラルが感じられる美味しく頂けるが、焼くことでさらに甘みが増す。
一方の岩牡蠣は、海底で4~5年かけてじっくりと育つため、大きく育ってずっしりとした身は見た目も圧倒的。
より強い海の香りを感じながらも、臭みは全くなく、甘くてジューシー。肉厚で頬張った瞬間の口いっぱいに広がるダイナミックかつ繊細な味わいは岩牡蠣ならでは。

それぞれ旬の時期に再び訪れたいと思わせてくれる貴重な滞在となった。

今年で41年目を迎える宮本水産の二代目宮本哲也氏は、能登では天然ものが主流だった岩牡蠣の養殖に取り組み、「少しでも良いものを直接お客様へ」という強い思いと共に、地元市場への卸売りから直販に舵を切った挑戦者である。

生牡蠣はもちろん、焼き牡蠣に牡蠣フライ、牡蠣の釜めしが堪能できるコースや、メニューには牡蠣を使ったジェラートまで!
これぞ牡蠣小屋、というアットホームで居心地の良い空間で、丁寧に育てられた真牡蠣と岩牡蠣の違いを味わって頂きたい。

宮本水産 能登かき ご注文はこちら

伊勢・的矢湾で牡蠣づくしを味わえる宿 いかだ荘山上

翡翠色に輝く風光明媚な的矢湾を見下ろす小高い丘の上に建つ16室の宿、いかだ荘。ロビーからは牡蠣筏がいくつも浮かぶうつくしい的矢湾が一望できる。
世界的にも有名なブランド牡蠣「的矢かき」専門の料理旅館として開業し、2022年に65周年を迎える。

2016年にオイスターファームラフトを設立し、オリジナルブランドである「伊勢志摩プレミアムオイスター」の開発に成功。
オールシーズンでの牡蠣の提供にこだわり、自ら養殖を手掛けるに至った気鋭の宿だ。
3代目社長の井坂泰さんはスロベニアに自身の畑を持ち、いかだ荘オリジナルワイン『高嶺(たかね)』も手掛けている。

 

リアス式海岸が美しい志摩半島は良質のプランクトンが豊富で、伊勢えびをはじめとした海の幸の宝庫となっていて、その恵まれた環境でいかだ養殖された的矢かきは、濃厚な旨味があり且つ栄養価も高い。

的矢で採れたものを的矢かきだと思っていたら、佐藤養殖場で養殖された牡蠣の名称だということを今回の訪問で初めて知った。
佐藤養殖場の創設者で水産学者の佐藤忠勇氏は、生でも安全に食べる事ができるよう研究を重ね、日本で最初の牡蠣浄化システムを開発。特許取得の技術で”あたらない”牡蠣、「清浄的矢かき」を作り上げた、牡蠣養殖のパイオニア的存在だ。

佐藤氏と親交があった「いかだ荘」の先代は、佐藤氏のすすめにより、多くの人に的矢かきの魅力を知って欲しいと的矢かき専門の料理旅館を創業した。今では日本中の牡蠣好きのリピーターに愛され、新鮮な海の幸を楽しめる旅館として高い評価を得ている。

牡蠣のフルコースでは的矢かきとプレミアムオイスターを1人前で30個程も味わえる。生牡蠣、焼牡蠣、カキフライに牡蠣ご飯とまさに牡蠣づくし。もちろん、活きがよく旨みがある伊勢海老やあわびと言った採れたての地物も一緒に味わえる。眼前の的矢湾に浮かぶかき筏を眺めつつ、生産者の方々の情熱に思いを馳せながら、贅沢な海の幸を堪能できるお宿だ。

伊勢志摩プレミアムオイスター

口に含んだ瞬間に鼻に抜ける芳醇な潮の香りと、口いっぱいに広がる濃厚な甘み…。

「一年中、生でおいしく食べることができる牡蠣を」

2016年、濱地大規さんはオイスターファームラフトを創設し、季節に縛られることなく年中生で食べられる”三倍体牡蠣”の養殖をスタートした。濱地さんはこの三倍体の潮干満帯養殖にいち早く挑戦し、水産庁から民間企業としてはじめて認可を取得して誕生したのが”伊勢志摩プレミアムオイスター”だ。
「固定概念との戦いだった」との言葉通り、この快挙が達成されるまで、数多くの困難に直面してきた。

三倍体牡蠣の養殖方法はオーストラリア等で行われているシングルシード方式。当初、伝統的な垂下式養殖法を行う地元の漁業者には受け入れがたい手法だった。
伊勢志摩の漁業者はほとんどが家族単位で経営。そこで、濱地さんは地元の漁業者の継続的な収益向上や後継者育成に繋がる仕組みを作り出すことで、地元の漁業者との信頼関係を構築した。実際に見学に訪れた際、養殖場で働く若者の多さに驚いた。

日本で伝統的に行われてきた垂下式は牡蠣を一年中海の中で育てる。しかし、シングルシード方式は、牡蠣が海から出ている状態を意図的に作り出すことで牡蠣を空腹状態にする。潮の干満による厳しい環境に晒された牡蠣は貝柱が鍛えられ、この太い貝柱がプレミアムオイスターの特徴でもある強い甘みとなる。

日光に当てるための杭の高さは、20cmの違いで1,2時間ほどの変化が生じるため、海・種・潮の特徴をパズルのように組み合わせて最適解を探す。非常に難しいバランス調整と多くの作業量が求められる手法だ。

手間がかかる分、どうしてもコストがかかる。それでも「高品質を守り続けることが自分の使命」と、濱地さん。牡蠣生産者としてだけでなく、濱地さん自身がいかだ山荘で宿泊業に携わっている経験が活きている。生産者目線に加え、お客様が何を喜ぶかを熟知しているという事が、提供する側から生産する側になった強みだ。

伝統と革新を融合させた「伊勢志摩プレミアムオイスター」、濱地さんの研究と努力は続き、益々進化を遂げていくだろう。

伊勢志摩を訪れる際に滞在先として忘れてならないのがアマネム。滞在を重ねるにつれ、世界のアマンのスタンダードを身にまとい、リゾートとして洗練さが増してきたように感じる。
英虞湾を見渡す雄大な景観と静寂に満ちた空間はいつも通り。温泉とサーマルスプリングを時間の限り楽しみながら、英虞湾で獲れたばかりの新鮮な魚介類と松坂牛を使った至高の料理に舌鼓を打つ。
アマネムから的矢までは車で30分程度の距離。アマネム滞在中に美食のアクティビティとして牡蠣づくしのランチやディナーへと出かけてみてはいかだろう。
そしてオイスターファームラフト、佐藤養殖場のそれぞれに訪問して生産者の話を聞くことができれば、旅は一層魅力的で思い出深いものになること享けあいだ。手間暇かけて愛情たっぷり育てられた牡蠣を見学し、学んだ後に頂く牡蠣はまた一段と格別に美味しく感じるものである。

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