La Dolce Vita Orient Express ~とろけるような列車旅をイタリアで~【前編】
近年日本国内でも多く目にするようになったクルーズトレインは、移動のためではなく、乗車することが目的の豪華列車であり、宿泊を伴うものから、数時間のスケジュールのものまで様々。新たな列車での旅の選択肢として、多くの人を魅了している。
クルーズトレインの本場ともいえるヨーロッパに、La Dolce Vita Orient Express(ラ ドルチェ ヴィータ オリエント エクスプレス)という、単に贅沢なだけでなく、日々の喜び(食事、家族、愛、余暇)を全身で受け止めて心から人生を楽しむ「La Dolce Vita(甘美な人生)」を体現する列車が登場した。
“オリエント エクスプレス”と言えば、アガサ・クリスティに小説の着想を与えたオリエント急行を復活させた列車「Venice Simplon Orient Express(ベニス シンプロン オリエント エクスプレス / Belmond社運行)」が知られているが、“甘い生活”を謳うラ ドルチェ ヴィータ オリエント エクスプレスはOrient Express Trains & Hotels Italyが運営する、異なるコンセプトを持つ列車だ。
前者は1920〜40年代に製造されたアール・デコ装飾のオリジナル車両を修復したものであるのに対して、後者は1960〜70年代のイタリア黄金期のエレガンスとデザインをテーマにしている。
今回は2025年4月にデビューしたラ ドルチェ ヴィータ オリエント エクスプレスを体験すべく、イタリアへと足を運んだ。
冬のローマに到着し、まず向かったのはOrient Express La Minerva(オリエント エクスプレス ラ ミネルヴァ)。その名の通り、今回乗車する列車ラ ドルチェ ヴィータ オリエント エクスプレスと同じ運営のホテルだ。
多少の不安を抱きながら異国の地に降り立った時に、端正な服装の送迎担当者が自分の名が書かれたボードを掲げて待ってくれているのは非常に心強いものだ。この旅が素晴らしいものになると確信するスマートなエスコートで空港を後にする。
約30分の快適なドライブでホテルに到着すると、映画から飛び出してきたかのようないでたちのドアマンに迎えられた。パンテオン至近と言う屈指のロケーションに佇むオリエント エクスプレス ラ ミネルヴァは、ローマの豊かな歴史と文化、映画「甘い生活/La Dolce Vita」に通ずるエレガントさ、そしてイタリアらしいフレンドリーなおもてなしを兼ね備えた、素晴らしいホテルだ。
天井の高い優雅な作りの部屋の窓からは、ベルニーニ作の象のオベリスクが立つミネルヴァ広場とパンテオンの後ろ姿が望め、自分がローマの中心地にいることを感じさせてくれる。
クラッシックなインテリアと最新のテクノロジーが見事に調和し、アメニティの充実度も高く、個人的にはアイロンではなくスチーマーが常備されているのは、ディナーの装いを手短に整えられてありがたかった。もちろん無料のプレスサービスもあるので、ご安心を!
夜はホテル6階にあるルーフトップレストラン&バー【Gigi Regolatto Roma】へ。夜の明かりに灯されたローマ市内を望むレストランではしっかりとした地中海料理を、またバーでは軽食とドリンクを楽しめるようになっている。
生憎、夕方から降り出した雨のためテラス席に出ることはできなかったが、せっかくイタリアに来たので、まずはカラマリと冷えた白ワインをいただき、メインはタラのグリルを堪能した。本場の地中海料理に舌鼓を打ち、明日からの冒険に胸を膨らませた。
移動の疲れを癒し目覚めた翌朝。ハープの音色が心地よく響くLa Minerva Barで朝食をいただく。この季節、イタリアの夜明けは遅く7時はまだ暗闇に包まれているため、彫刻の厳かさが引き立つラウンジでの朝食は、ローマにいることを実感する時間だった。
しっかりとエネルギーをチャージし、出発までの時間を有効活用しようとコンシェルジュデスクに立ち寄った。深い知識や豊富な情報もさることながら、ウィットにとんだ会話が楽しいコンシェルジュにおすすめの散歩コースを伝授してもらう。『ローマは迷った時が新たな発見のチャンスだよ』という格言を胸に、美しい街並みを思う存分楽しんだ。
ホテルに戻ってルーフトップのバーで軽食をいただき、いよいよ“甘い旅”のスタート!お見送りしてくれたGMにホテルのスタッフの素晴らしさをお伝えしたところ、『列車のチームに記憶を塗り替えられないか不安だな』と謙虚な返答。『じゃあ、戻ってきたらその答え合わせをしましょう!』と約束してホテルを後にした。
快適な専用車でオスティエンセ駅へ。事前に登録されている車両での到着のため、駅の敷地内に入ると同時に誘導されたのは、ラ ドルチェ ヴィータ オリエント エクスプレスの世界観を感じる優雅な専用ラウンジ前の車寄せ。迎え入れられたラウンジではトリオの生演奏、バーテンダーがふるまうカクテル、食欲をそそるカナッペがふるまわれる別世界だ。そして、すっかりとくつろいでいるところにスタッフが届けてくれたのは乗車券。まさにTicket to Sweet Journey!
午後8時。クルーが並んで出迎えてくれているホームへ移動し、いよいよ乗車。各車両ごとに配置されている専属のスタッフが2泊3日を過ごすキャビンに案内してくれた。
今回予約したのはデラックスキャビン。多くのイタリアのデザインの巨匠にインスピレーションを得たという内装は、1960年から1970年のイタリアのクラフトマンシップ、デザイン、創造性に敬意を表したものだそうだ。そんな思いの詰まった、コンパクトながら機能性と美しさを兼ね備えたキャビンにさっそく居心地の良さを感じた。
無事にローマを出発して間もなく、ディナーの時間。ディナーのドレスコードはLa Dolce Vita Elegance-1960年代のイタリア映画を彷彿とさせるシルクのカクテルドレス♪ ということで、華やかに着飾った乗客の方々が集まったダイニングカーはイタリアの社交場さながらの輝きを放っていた。
ディナーテーブルでご一緒したイギリスからいらしていたご夫婦とクルーズトレイン談議に花を咲かせ、夕食とカクテルを楽しみながら、初日の夜は更けていった。
そして優雅なディナーを終えて戻ると、キャビンは寝室に様変わり!ソファーベッドとは思えない快適な寝心地のベッド、ロゴがデザインされたかわいいルームシューズ、アメニティが設置された、コンパクトとは言え使い勝手の良いシャワーキュービクルと、ホテルの部屋さながらの空間は、まさに動くホテルそのものだ。
列車特有のリズムが揺りかごのように感じられ、移動そのものを滞在として楽しむ…そんなホテルとは異なる非日常の体験の中で、眠りについた。
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聖年のローマを歩いて
ローマ空港に降り立った瞬間、無数の観光客と巡礼者と思しき人々のざわめきが聴こえてきて、今年のローマは常とは違う“特別な年”であることを感じた。

