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ル・コマンダン・シャルコーで行く最果ての旅【後編】
2022.09.22
ACTIVITY, DISCOVERY

ル・コマンダン・シャルコーで行く最果ての旅【後編】

エクスペディションクルーズの最大の魅力は、船外で行われる毎日のエクスカージョンにある。
それが世界最高の砕氷能力を持つル・コマンダン・シャルコーであれば、極地における活動の範囲がどの船よりも広く奥深いものとなる。
大型船では近づく事ができない海岸線でのアクティビティや、上陸する際にはゾディアックと呼ばれる小型船に乗り換えが必要で、エクスペディションクルーズの醍醐味である。

乗船早々に待ち受けていたのは、緊急時の避難訓練とクルーズ中に予定されているエクスペディションの説明、そして各エクスペディションに参加する際に着用するスーツのサイズ合わせだ。
ポーラーブーツ、カヤックスーツ、ドライスーツ・・・とりわけポナンのエクスペディションクルーズへの参加の証ともなるオレンジ色のオリジナル・ポーラージャケットのフィッティングには、これから向かう極地への期待が俄然高まってくる。

ル・コマンダン・シャルコーでのエクスペディションは、基本的に午前と午後にそれぞれ一回ずつ用意されていて、翌日のエクスペディションの詳細は、前日の夜にキャビンに届けられるデイリープログラムによって知らされる。
流氷が浮かぶ北極海でのカヤックやドライスーツを来てのフローティング体験”コールド・ウォーター・スイミング”、船から凍てつく海に飛び込む”ポーラー・プランジ”、そしてスヴァールバル諸島ならではの絶景ポイントに上陸しての”ポーラー・ハイク”と多彩なアクティビティのおかげで乗船中は退屈とは全く無縁の時間を過ごした。

加えてスバールバルやグリーンランドを巡る航路の魅力は、極地ならではの多様な野生動物との遭遇が期待できることにもある。
その中でも目当てとなるのが、地球上で最も大型の肉食獣とされている北極クマ(ポーラーベア)になるだろう。出航時には、「ポーラーベアが確認できたら昼夜問わず館内アナウンスします」と話をしていたキャプテンの言葉通り、航海中は幾度となくアナウンスが入り、その都度デッキ5のプロムナードに出て氷上のポーラーベアの様子を垣間見る事が出来た。
親子と思しき二匹が氷上を闊歩する様子、狩ったセイウチを捕食する様子。時にサファリカーでブッシュに分け入るゲームドライブの如く、氷を割りながらポーラーベアに接近しようとする試みにクルーの情熱を感じ、そしてル・コマンダン・シャルコーに乗船していることを実感させられた思いだった。

エクスペディションの時は、毎回デッキ3でポーラーブーツに履き替え、波間に浮かぶ10人乗りのゾディアック(小型船)に乗って母船であるル・コマンダン・シャルコーを離れることになる。
最初の上陸は、罠を仕掛けてトナカイや狐といった野生動物を獲って暮らしていた先住民の居住跡を見ることができるスピッツベルゲン島北部のムシャムナと呼ばれる場所。
過酷な自然環境の中に建つ一軒家に、一体当時はどんな生活だったのだろうかと思いを馳せる。

5日目のエクスペディションでは、ノルウエーの言葉でバードクリフを意味するアルケフィエッレに立ち寄った。
ゾディアックから見上げる海岸線から垂直に聳え立つ300メートルの断崖絶壁は圧巻で、岩壁に所狭しとへばりつくように生息するウミカラスの鳴き声だけが静寂の中に響き渡っていた。その数50万羽以上と言うことで、やはり過酷な環境の中に生きる生命力の強さと不思議を感じる圧巻の景観だった。
また、1900年代初頭にこの地を訪れたモナコ公国のアルベール1世にちなんで名付けられたモナコ氷河では、青みがかった巨大な氷壁が轟音と共に海面へと崩れ落ちる瞬間を幸運にも目の当たりにすることができ、大自然のダイナミズムを感じた。

5日目の朝、出航してからフィヨルドに沿って航海していた船は、スバールバル諸島の最北部を離れ、進路を北にとった。やがてフィヨルドの氷河と乾いた台地、山々の風景が遠ざかり、船はいつしか見渡す限りの氷原に取り囲まれていた。
操舵室のあるデッキ8のブリッジは常時訪れる事が可能で、船の位置と進路、船の周辺の様子を知るには絶好の場所だ。
最初は薄かった氷も北に向かうにつれところどころ厚さを増し、氷が砕かれる度に足元に伝わる振動も次第に大きくなっていく。PC2の砕氷能力を誇るル・コマンダン・シャルコーの本領発揮といったところだろう。

氷の厚さを確かめるように北進を続け、キャプテンの指示でアンカリングを始め、デッキ3から氷上に降ろされたタラップを下りて氷上に立つ。北緯81°53′ 東経20°03’ ル・コマンダン・シャルコーでのエクスペディションのハイライトとも言える氷上でのランディングの瞬間だ。
「今我々は地球上で最も北に立っている」と、キャプテン パトリックからの粋なアナウンスが流れ、ランディングの成功を祝う意味でのシャンパンが振舞われ、しばし北極海の氷上での経験し難いひとときを楽しんだ。
氷上でのランディンングを果たし、船は南下してスバールバル諸島を周回する航路に就き、ロングイエールビーンを目指したのだった。
帰路には、シロナガスクジラの群れと遭遇した上に、船を見送るように並走して泳ぐイルカの群れもキャビンのデッキテラスから間近で観察する事が出来、まさに北極海に浸った11日間のクルーズだった。

乗船中は、その日のエクスペディションの復習の意味でのリキャップと呼ばれるレクチャーが毎夕催された。
リキャップ以外にも、各分野の専門家によって手ほどきされるレクチャー、”ポーラーベアの生態”や”北極の氷”、”砕氷船の仕組み”や”スヴァールバル諸島”等々の極地を航海するエクスペディションクルーズならではのタイトルのプログラムやドキュメンタリー映像の放映が毎日組み込まれる。
とりわけ極地研究の為のラボラトリーを有するル・コマンダン・シャルコーでは、実験内容と共にデータも乗客に公開されることもあり、興味の度合いによっては、かなり高度な知識を会得できる貴重な機会にもなるだろう。

ロアール・アムンセンが初めて北極点に到達したのは1926年のこと。それから100年足らず、ル・コマンダン・シャルコーの誕生によって、安全かつ快適に極地旅行を楽しむことができるようになった。
北極を訪れる魅力は何と言っても過酷な自然環境ゆえに地球上に残された手つかずの景観や、ここでしか見れない野生動物との出会いにある。そして今、ル・コマンダン・シャルコーは、ラグジュアリーな船内空間と共に前人未踏の世界へと誘ってくれるのだ。

※北極点を目指す15日間のクルーズ”The Geographic North Pole”は毎シーズン4回の航行が予定されています。詳細はお問い合わせ下さい。

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