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ル・コマンダン・シャルコーで行く最果ての旅【前編】
2022.08.22
ACTIVITY, DISCOVERY

ル・コマンダン・シャルコーで行く最果ての旅【前編】

フランス人冒険家であり、科学者、そして医師でもあったジャン・バティスト・シャルコー(1867-1936)が、1905年に初めて南極を航海してから110年の節目を迎えた2015年に、一つの壮大なプロジェクトが始まった。それは、調査の専門家や科学者が同行する探検の要素を備え、より極地深くまでの航行を可能にする電気を動力としたハイブリッド客船の開発だった。
その船はル・コマンダン・シャルコーと命名され、ジャン・バティスト・シャルコーの極地研究に対する情熱と研究そのものを今世紀に引き継ぐ形で2021年に就航し、同年96日フランス船籍の船として初めて北極点(90°N)に到達するという偉業を成し遂げた。

液化天然ガスとリチウム電池で動く世界初のハイブリッド砕氷船で、砕氷能力は客船では初めてのPC2(ポーラークラス2)の規格を持つ世界でただ一隻のラグジュリー砕氷船だ。
2021年101日 ル・コマンダン・シャルコーは、ジャン・バティスト・シャルコーの最後の遠征の出発地だったフランス北西部のル・アーブル港にて伝統的な祝福を受け、任務を開始。2022年春にはゲストを乗せての初めての北極海クルーズから商業運航をスタートさせた

Polar immersion in Svalbard

20226月末、「スバールバルで極地に浸る」と題された1011日間のクルーズに乗船する機会を得た。乗船一週間前に届いたコマンダン・シャルコーのイニシャル、CCのロゴが刻印されたギブアウエイが、これから始まる冒険旅行へのわくわく感を高めてくれる。
シャルル・ド・ゴール空港からポナン社が用意したゲスト専用チャーター機に乗り、クルーズの起点であるロングイエールビーンまでは4時間のフライトだ。

ロングイエールビーンは、ノルウェー領スヴァールバル諸島の中のスピッツベルゲン島にある人口2,000人ほどの世界最北の町で、スピッツベルゲン島以外には、ノールアウストラン島、バレンツ島、エドゲ島といった島から構成されている。どの島もフィヨルドによる入り組んだ複雑な海岸線を持ち、総面積の60%が氷河で覆われ、30%が不毛の台地という過酷な自然環境だ。
そんなスヴァールバル諸島を一周する航路で、キャプテン パトリック率いるクルー190名と乗客173名を乗せたル・コマンダン・シャルコーは、夏のロングイエールビーンを出航した。

乗船して直ぐに目を惹くのは、吹き抜けに掲げられている高さ9メートルの紺碧の光を放つデジタルアートで、ル・コマンダン・シャルコーのマスターピースとも言えるミゲル・シュバリエの作品だ。
デッキは6層構造で、デッキ3からデッキ9までは船内中央に設置された2基のガラスのエレベーターと階段を使って移動することになる。

全室バルコニーが備わったオーシャンビューのゲストキャビンは、デッキ6からデッキ8123室あり、25平方メートルのプレステージキャビンから最大300平方メートルのオーナーズスィートまで、6つのタイプにカテゴライズされる。
二人の建築デザイナー、ジャン・フィリップ・ヌエルとジャン・ミッシェル・ヴィルモットによって生み出されたインテリアは、ベージュとグレーを基調にしつつ木のぬくもりと上質なファブリックを活かしたシンプルながらも洗練されたシックなデザイン。

レストラン、バーラウンジがデッキ5とデッキ9にそれぞれ1箇所ずつ、サウナと屋内プールが付いたスパ施設とフィットネスジム、屋外の温水プールとオープンエアダイニング、ライブラリー、ショップ、エンターテイメントシアターが主なパブリックスペース。
一般的な大型客船とは異なり、半日もあれば全ての設備と場所を把握できるほどコンパクトながらも、極地探検船とは思えない位に快適な船内空間となっている。

最果ての極地クルーズとは言え、ガストロノミーに定評があるポナン社運航の船ということもあり食事は期待通り。ル・コマンダン・シャルコーの魅力の一つは、極地探検船にして最高の美食のクルーズシップでもあるということ。
朝食、ランチ、ディナーとも、デッキ9のビュッフェレストランの“SILA(シラ)とデッキ5のガストロノミーダイニングの”NUNA(ヌナ)、そして24時間のルームダイニングによってもてなされ、いずれも事前予約の必要はなく、乗船中はその日の気分で気の向くままに楽しませてもらった。

主にディナーで利用したヌナは、アラン・デュカス氏のシャルコーの哲学と挑戦への賛同によって生まれたダイニングということで、デュカス氏本人が直接監修を務めるダイニングを持つ船としては世界でただ一隻とのこと。
洗練された一皿一皿はとても船の中で頂いているものとは思えない程に完成度が高く、ソムリエ推薦のワインと共に心行くまで堪能した思い。

エクスプロージョンと題された日替わりのコース料理とアラカルト料理をフレキシブルに選ぶことができ、オフィシャルシャンパンになっているヴーヴクリコと、やはり日替わりの白//ロゼ各2種類のセレクトワインと共にサービスされる。
追加料金が必要になるものの、ソムリエにお勧めの一本を任せれば食事は一層優雅なものに。
一方で、デッキ9シラもビュッフェとは言えヌナに引けを取らないクオリティで、定番に加えて日替わりのバラエティーに富んだメニューによって食事を飽きることなく楽しませていただいた。

シラにアクセスできるデッキ9の前方には、180度のパノラマビューが楽しめる全面ガラス張りのオブザベーションラウンジがある。
そしてビューポイントは後方の屋外プールブルーラグーンとオープンエアダイニングの“INNEQ(イヌック)へと続き、何時どこに居ても楽しめる白夜ならではの北極海の雄大な自然景観と、パーソナルなホスピタリティによる毎日のカクテルと食事は、過去の経験で知るエクスペディションクルーズのイメージを良い意味で変えてくれたものと感じる。

グルメ体験は食事に留まらず、イブニングカクテルとして催されたキャビアとウォッカのテイスティングや、パルマハムと併せてアペロールやカンパリが振舞われたイタリアをテーマにしたプログラムなどもル・コマンダン・シャルコーらしい食のエンターテイメントだ。

命がけの極地探検に際し、最も多くのワインとシャンパンを持っていったという逸話が残る冒険家ジャン・バティスト・シャルコー。そんなシャルコーの遺志とスタイルを受け継いだ船だということを乗船して早々に感じる事が出来た。
“地球上で最も過酷な場所に、最も快適に旅する時間”…
ラグジュアリーな船内空間に身を任せ、グルメを楽しみつつも過酷な環境への訪問を安全かつ快適に体現する。このギャップこそが、ル・コマンダン・シャルコーで極地を目指す魅力と言えよう。

毎日行われるソディアックに乗り換えての船外活動こそが、探検クルーズの最大の魅力。
ル・コマンダン・シャルコーのエクスペディションの様子は、9月下旬公開予定のル・コマンダン・シャルコーで行く最果ての旅【後編】でお届けします。

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