ラグーンオイスターを求めて、ウアリディアへ
モロッコへの旅は彼是十数回を数えるだろうか。
初めてこの国を訪れた90年代初頭は、イスラムのダイナミズムを感じるカオスそのものだったが、最近では良くも悪くも旅行し易い旅先となった。マラケシュは世界的な観光地としてすっかり認知され、名立たるホテルブランドも一通り出揃った感がある。
モロッコ一の商業都市カサブランカは、モロッコ旅行の玄関口。フェズやメクネス、マラケシュは訪れるべき世界遺産の街で、マラケシュから足を延ばしてのサハラ砂漠での体験もモロッコ旅行のハイライトと言えるだろう。
乾いた台地の国とは言え、過去を振り返れば訪れた場所は内陸部の街ばかりということもあり、今回はコーストラインを目指すことにした。
向かった先はマラケシュから車で3時間の大西洋に面した小さな町、ウアリディア。
マラケシュの伝統的なリヤドホテル“ラ スルタナ“が運営するもう一つのホテル“ラ スルタナ ウアリディア”は、モロッコで一番と評されるラグーンオイスターが堪能できるリゾートでもあるとのことで、目的地に定めたのだ。
赤茶けた荒野を北に向かって駆け抜けると、やがて紺碧に輝く大西洋が見えて来る。ウアリディアは、モロッコ王族が夏の間別荘で過ごした縁の場所ということもあってか、ラグーンの前に建つラ スルタナ ウアリディアもモロッカンスタイルの邸宅のような佇まい。
遠くから微かに聞こえる大西洋の荒波の音をよそに、目前のラグーンは静かで穏やかに揺らいでいた。
桟橋の先にある水上バンガロー“The O Bar”の“O”はOysterの頭文字で、美しいラグーンを眺めながら新鮮なオイスターを味わうことができるホテルのコンセプトを象徴する場所だ。
そして、ビーチ沿いのオープンエアのレストラン“La Table de La Plage”こそ、ラ スルタナ ウアリディア自慢のダイニング。
チェックイン早々、レストランに併設する生け簀に案内され、ここがオイスターのみならず魚介類の宝庫であることを知ることに!
“La Table de La Plage”のメニューに並ぶのは、その日の鮮魚とオイスターに加え、スパーダークラブ、マテ貝、ロブスター、クレイフィッシュ、ウニ、数種類のエビとイカなど全て地物と言う新鮮なシーフードのオンパレード。
エクスカージョンの一つとして、長さ5キロに及ぶラグーン内を船に乗ってオイスターファームを訪問。このラグーンでの牡蠣養殖の歴史は70年になり、ウアリディア・ラグーン・オイスターとして国内消費のみならず、ヨーロッパにも出荷しているとのこと。
大西洋からの海水と地下からの湧き水が入り混じることよって豊富なプランクトンが生息していることに加え、干満差が激しいラグーン内のバスケットで育てる牡蠣は貝柱が鍛えられ、甘味とうま味の強さが特徴のオイスターになる。ホテルに戻って生け簀から上げて剥いてもらったばかりのラグーンオイスターを、モロッコ産のシャルドネと共に舌鼓を打つ。ミネラル分とほのかな塩味のバランスが良く、他の魚介類もオーダーしつつ、まさにシーフード三昧の滞在となった。
カサブランカを飛び立つ前に、ウワリディアのラグーンリゾートに浸ってシーフードを存分に味わえるのは、何ともユニークで特別なエクスペリエンス。行き慣れた国ながら、知られざるモロッコの魅力を一つ発見した思いだ。
ラ スルタナ ウアリディアで最も価値ある時間はサンセットタイム。夕暮れ時になると、ゲストは総出で思い思いの場所に陣取り、カクテル片手に大西洋に沈み行く夕陽を眺めながら過ごすひととき。
こんなにも美しい夕陽を拝むように見送るのはいつ以来だろうかとふと考える。世界が災難に見舞われ、3年ぶりのモロッコの旅。
目前に沈み行く夕陽は、やがて日の出となって日本に昇ることを思うと、今まで当たり前だった旅を取り戻せた喜びに感謝の思いが湧いてくる。インシャアッラー 2023年は、いったいどんな世界が待ち受けているのだろうか。
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マラケシュとのご縁
93年、転職のタイミングで訪れたのが最初の訪問だった。今でこそインターネットで容易に情報が入手できるものの、その時分はモロッコはまだ未知の旅先だった。