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天空のラダック、遥かなる祈りの地へ
2019.08.09
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天空のラダック、遥かなる祈りの地へ

WRITTEN BY MAMI.H

「ジュレー!」
朗らかな子どもたちの声が、乾いた風に吹かれてどこまでも高い空を舞う。

リトルチベットとも言われるラダックは、インドの最北に位置する、ヒマラヤに抱かれた信仰の土地だ。仏教王国チベットに吹き荒れた文化大革命の嵐によって、チベット仏教の伝統文化の悉くが破壊されてしまったが、独立国家であったラダックは、チベット仏教を篤く信仰する土地でありながら滅亡後はインド領とされたため、奇しくもその嵐を免れることができた。
そうして“チベット本土よりチベットらしい”ラダックの人々は、先祖から受け継いできた大地で今日まで信仰の生活を続けている。

ラダックの玄関口となる街、レー。
近年、ラダックはインド国内・欧米の観光客が熱い視線を送る観光地として目覚しい発展を遂げており、レーの街はここ五年程でインフラが設備され倍近くの大きさになった。
ラダックを旅する人々は、レーを拠点として各地のゴンパ(寺院)を巡るのが一般的だ。しかし、月の大地とも称されるラマユルはレーから125kmの場所にあり、デイトリップで訪れるには時間的・体力的に厳しい行程となる。
また、ラダックは場所によっては高度4,000mを超え、ゴンパの多くは軍事要塞の役割も担っていたため丘や山の上に建てられており、訪れる観光客には常に高山病のリスクが伴う。

そんなラダックを安心かつ快適に巡る最適の方法がある、それが“シャクティ”だ。
ラダック内に6軒のプロパティを持ち、専属のガイドが各地のプロパティを巡る形でラダックの魅力を余すことなく案内してくれる。
シャクティはインフラの整っていないラダックにおいて最大限の快適さを提供してくれるが、いくつかのプロパティは人里から遠くはなれた場所に存在するため、十分な電気やインターネット環境は望むべくも無い。
しかし、周囲を完全な暗闇と静寂によって閉ざされた高度4,000mの場所で見上げる星空は、便利さを犠牲にして始めて得られる幾万の輝きに満ちている。

ラダックといえばチベット仏教のゴンパ巡りが有名だが、この土地の魅力はそれだけではない。荒涼とした山肌を流れるエメラルドグリーンのインダス川でのラフティング、高度3,800m付近から自転車で駆け下りるマウンテンバイクツアーなど、もし旅人がよりアクティブに過ごしたいと思うなら、ラダックの雄大な自然はどこまでもその期待に応えてくれるだろう。
チベット仏教の神降ろし(シャーマン)であるラモという女性に会い、自分の将来を見てもらったり悩み事を聞いてもらうという特別な体験も可能だ。素朴な笑顔の女性が儀式によって神と一体になる光景は、言葉に表すことが難しいほど神秘的な空気に包まれており、生涯忘れられない経験となるだろう。

しかし、私が感じるラダック最大の魅力はラダッキー(ラダック人)のあたたかさだ。街を散策していると子どもたちが寄ってきて、手を引いてお気に入りの場所へ案内してくれる。卵ひとつが貴重品となる高地で、おばあさんがよく来たねと伝統のバターティーと素朴なお菓子を振舞ってくれる。他人を家族のように迎えてくれるラダッキーのようなあたたかい人々には、もうヒマラヤの奥地のような地球の果てに来なければ出会うことは難しいのかもしれないと切なさを覚えた。
ラダックは観光地として注目されることでインフラが整い始め、一部の高地でも電気が通るようになった。ヘリコプターが運行できるようになり、ヒマラヤ奥地から街までの移動が格段に速くなった。人々の生活が便利になるにつれて失われていくものもあるだろうが、ラダッキーのあたたかさはきっとこの先も消えることはないだろう。