シンギタパムシャナ “Place of Miracle”

アフリカ大陸で展開するラグジュアリーサファリロッジ最高峰のブランド、シンギタの中で最もエクスクルーシブかつリモートなロッジと言えるのが、ジンバブエのシンギタパムシャナである。

シンギタパムシャナを目指す旅の玄関口は、南アフリカのヨハネスブルグ。
フェデラルエアー運航による軽飛行機に搭乗し、約1時間40分の飛行で南アフリカから国境を越えジンバブエへ。
そしてジンバブエ側のバッファローレンジ空港に一旦着陸して入国審査を済ませてから再び飛行機に乗り込み、シンギタパムシャナのプライベート滑走路まで10分のフライトだ。
到着早々ゲストを待つサファリカーに乗り込みロッジに直行するも、道中はすでにゲームドライブさながらで、象やキリン、バッファローといったさまざまな野生動物が出迎えてくれる。

1998年にパムシャナロッジとして誕生し、2008年にシンギタパムシャナとしてオープンを果たした。
マリラングェ・ダムを見下ろす岩山の上に建つシンギタパムシャナロッジは、1ベッドルームから3ベッドルームまでのゲストルームが8室と5ベッドルームのマリラングェハウスを加えた全9室の小さなロッジ。
全室プライベートプール付きのエレガントなスイートは、古代ジンバブエの豊かな民族の歴史からインスピレーションを得たジンバブエアンスタイルを踏襲していて、シンギタロッジの中でも最も伝統的なアフリカンテイストに満ちた雰囲気を醸し出している。
東京23区とほぼ同じ広さ60,000ヘクタールの広大なマリラングウェ野生生物保護区の中に建つ一軒宿ということもあり、地平線まで続く見渡す限りの雄大な景色と圧倒的なエクスクルーシブ感は、シンギタパムシャナに宿泊するゲストだけが味わうことができる特別な体験だ。

そんな日常の喧騒から遠く離れたシンギタパムシャナでも、ロッジのクォリティー、サービスはシンギタスタンダードとも言うべき最上級のもの。穏やかで優しいジンバブエ人が持つ気質とも相まって、パーソナルできめ細やかなホスピタリティによって楽しませてくれる。
他のシンギタロッジ同様に滞在中の全ての食事と飲料、一日2回のゲームドライブが含まれるオールインクルーシブで、ダム湖ででのボートクルーズやフィッシングに加え、数百年前に描かれたと言うブッシュマンのロックアートを鑑賞するツアーなどは、パムシャナのみのアクティビティとなっている。
パムシャナでもグルメエクスペリエンスへの期待も決して裏切られることはない。
イタリアンやフレンチ、アジアンやメキシカンといったバラエティに富んだメニューと南アフリカを中心に常備されている250種類のワインがその日の料理に併せてソムリエから勧められる。食前のアペリティフをバーで楽しみ、その日の天気を見ながら思い思いのロケーションでテーブルをセットして食事を楽しむというのもシンギタパムシャナのスタイルだ。

多数のバオバブの木と、猛禽類を含む500種以上の鳥類が生息する野性味あふれるゴナレゾウ国立公園におけるゲームドライブのターゲットは、何と言っても絶滅危惧種に指定されている白サイと黒サイを一目見ることだろう。
一時はこのエリアで絶滅したとされる黒サイもシンギタが中心となって設立したマリラングウェトラストによって2014年に南アフリカから移送され、その後自然繁殖が確認されるようになり、ロッジと近隣のコミュニティに付加価値を生み出している。
シンギタパムシャナに宿泊することによって、クロサイを含む希少種の保護と野生動物と生態系の持続可能性を促進させ、そしてマリラングェ野生動物保護区の魅力向上に貢献できるというのも非常に有意義だ。

滞在中はサファリガイドと共にダム湖でのフィッシングを試みるも釣果に恵まれず、再び湖にて夕暮れ時のサンセットクルーズを楽しませてもらった。
水を打ったような静寂の中、水を掻くモーター音だけが響く。時折聞こえてくるのは、上空を舞う鳥と水面を上下するカバの鳴き声くらい。
やがてボートが湖の奥深くまで来たころ、遠くに船と人影と思しき姿が確認できた。薄暗がりの中、我々を待ち受けていたのは湖に浮かぶフローティングカクテルバーだった。
それは、サファリガイドの粋な計らいで、記憶に残るちょっとしたサプライズとなった。シンギタパムシャナは、人里離れた圧倒的なエクスクルーシブ感を楽しむにはうってつけの場所だ。アフリカ大陸において最高のハイダウェイと言えるだろう。