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遂に就航!リッツ・カールトン・ヨット・コレクション
2022.12.23
ACTIVITY, FOOD & WINE, DISCOVERY

遂に就航!リッツ・カールトン・ヨット・コレクション

2022年10月、遂にその航海は現実のものとなった。
不測の事態によって2年もの間延期を余儀なくされていたリッツ・カールトン・ヨット・コレクションが、満を持して就航の時を迎えたのだった。待ち焦がれた分、ニース港に接岸しているダークブルーの船首に掲げられた銀色に光る”EVRIMA”のプレートを目前にした時は、思わず身震いがしたほど。
船名は、ギリシャ語でディスカバリーを意味する”エブリマ”。
初就航から2度目の航海にあたる、南仏ニースからバルセロナまでの7泊8日の航海に乗船した。

チェックインした真新しいキャビンは、デッキ5中央のテラススィート。テラス付きのオーシャンビューで、ダブルバニティ、トイレ、シャワーを備えた35平方メートルは、7泊を過ごすには十分な広さ。木の温もりが感じられるダークブラウンの備え付け家具とグレーとベージュを基調としたモダンエレガントとでも表現すべき落ち着いたインテリアは、窓を通して差し込む採光と間接照明によってもたらされる柔らかな明かりによって見るからに居心地の良さを醸し出していた。
リッツ・カールトン・ヨット・コレクションが掲げたコンセプトは、リッツ・カールトン・ホテルによって培われた世界最高のホスピタリティを備えた世界で最も豪華なスーパーヨット。
デビューを飾ったエブリマは、全長190メートル、全幅24メートル、総トン数25,400トン、キャビンは8つのカテゴリーの全149室で、最大乗客数298名に対して、クルーの数は246名と年々大型化しているクルーズラインの中にあって、小型のラグジュアリークルーズシップである。

船内は、デッキ3からデッキ10までの8フロアーが3基のエレベーターで結ばれていて、レストランとバーがそれぞれ5か所ずつ、スパ、フィットネスジム、ブティック、リビングルーム、ラウンジ、屋外プランジプールとジャグジーが主だった施設で、一般的なクルーズの定番とも言えるエンターテイメントシアターの類はない。船尾はデッキテラスが広く取られたスーパーヨットらしい棚田を彷彿とさせるフォルム。
各デッキのテラスシートは、まるでリゾートホテルのプールサイドさながらの雰囲気で、サービスをするクルーもデッキシューズにサングラス、ポロシャツとショートパンツといったカジュアルな出で立ちだ。
乗船中のランチは、専ら陽光差し込むデッキ5のオールデイダイニング”プールハウス”とデッキ6のアジア料理”タラートナム”にて。この季節の地中海は気温もまだ高く、毎度食事の前には決まってシャンパンをオーダーしつつ、いつもより長いランチタイムのひと時を楽しませてもた。

エブリマ最大の魅力は、パーソナルなサービスと食によるエンターテイメントにある。
乗客一人につき、クルー1名の比率が示す通り、船内どこに居てもクルーから名前で呼ばれ、とりわけ24時間直接担当のパーソナルコンシェルジュに繋がりサポートしてもらえるのは何とも有難かった。
朝食はデッキ5のオールデイダイニング”プールハウス”とデッキ4の”エブリマルーム”、ランチは同じく”プールハウスとデッキ6の”タラートナム”、そしてディナーは”タラートナム”、”エブリマルーム”に加え、シグネチャーダイニング”S.E.A”のラインアップ。この規模の船で、バーとレストランが5か所、ビュッフェは採用せず、全てアラカルトメニューというのも驚きだった。
エブリマでは、”S.E.A”での食事を除く、全ての食事(24時間ルームサービスを含む)と飲料、船内アクティビティ、Wifi利用料が乗船料に含まれるオールインクルーシブ。

シャンパンはモエ・エ・シャンドン、ワインはデザートワインを含む数十種類に加え、カクテル、ブランデー、リキュール類も幅広く用意されており、敢えてメニューがないのにもサービスへの自信の表れのようなものを感じた思い。
朝食のロブスターオムレツとランチのハマチのセビーチェ、キムチチャーハンは絶品で何度もいただいたお気に入りのメニュー。夕食はコース料理がいただけるファインダイニングの”エブリマルーム”と夕食時になると寿司メニューが加わる”タラートナム”でほぼ毎夕楽しませていただきました。2日目以降は、水を注がれる際にガス入りかガスなしかを都度聞かれることもなくなり、まるで馴染みのレストランに居るような心地よさを感じるサービスと共に乗船中の食事を満喫させてもらった。

そして、エブリマに乗ったからには、試したいのがシグネチャーダイニングの”S.E.A”。リッツ・カールトン・ヴォルフスブルク内のミシュラン3つ星レストラン、アクアのシェフを務めるSven Elverfeldが監修するレストランが【S.E.A. <Sven Everfeld Aboard>】ということで、一度は試そうと乗船前に予約を入れておいた。
スヴェン・エルバーフェルドの料理は、モダンヨーロピアンスタイルで、高級食材の味わいとテクスチャーの調和に重点を置いているとのこと。スぺシャルカクテルとオリーブをキャラメライズした1品から始まった全9品は、どれもが見た目は驚くほどシンプルながら、素材が持つ本来の風味と味わいを表現しつつ、複雑な味わいをもたらしてくれる正しく食のジャーニーと呼ぶに相応しい価値あるひとときだった。メニューは季節ごとに入れ替わるとのことなので、追加料金が必要ながらも乗船中に一度は試したいダイニングだ。

一方で、寄港地におけるエクスカージョンも多彩で魅力的だ。
ニースを出航して最初に寄港したのはモナコ。ヨットハーバー越しに美しいモナコの街並みを一望できる岩壁には1日半停泊し、乗客は思い思いのモナコを満喫。市街地を歩いて散策した後は、事前予約していたフェラーリF486をレンタルして市街地のグランプリコースとエズ村へのドライブを楽しんだ。
続いて向かったのは、プロヴァンスの小さな町サナリー・シュル・メール。大きな港を持たないため、沖合にアンカーを降ろし、小型ボートに乗り換えての上陸。スキューバダイビング普及の礎となった伝説のスイマー、ジャック=イヴ・クストー生誕の地として知られ、遺志を継いだジャン=ミッシェル・クストーが今尚暮らす、地中海の宝石とも言うべき美しい漁村。活気溢れる市場を歩いた後は、15世紀に建てられた石造りのタワーに上がって眼下に広がる海と町の眺望を満喫した。

セートでは、オイスターファーム、タルボリエッシュとタルボリエッシュが運営するオイスターホテル、オストリアリアを訪問して新鮮なオイスターに舌鼓を。スペイン国境の小さな町ローズでは、山あいの小さなワイナリー、マーチン・フェイショを訪ね、葡萄畑が見渡せるテラスにてワインと共にホームメイドで自慢のタパス、ハム、チーズを味わいつつ最後のエクスカージョンを楽しんた。どの寄港地も、エブリマに乗船しなかったら立ち寄ることがなかったであろう、素朴さが感じられる地中海の素敵な町々だった。
航海6日目のコリウルの沖にアンカーを降ろした際、今回の航海では一度だけ最後部にあたるデッキ3のマリーナテラスが開放されました。海面に下したタラップからそのまま海に出てマリンアクテイビティが楽しめるということで、シーカヤックに乗って凪の海へ。古い城壁に囲まれた美しいコリウルの町と、エブリマとの間をしばしパドルを漕いで往復。海上から見上げたエブリマの濃紺の船影は何とも迫力があって恰好良く、これぞスーパーヨットの醍醐味とも言うべき記憶に残る一日となったのだった。

そして忘れてならないリッツ・カールトン・ヨット・コレクションらしい、もう一つの船内アクティビティが、アートコンシェルジュによって案内される船内アートツアーである。エレベーターホールの吹き抜けの壁一面に施された白一色のウォールアートは、オランダ人陶芸家、モ・コルネリッセによるもので、光の反射を連想させる幾何学的な形がまるで波のように配置された印象的な作品。そして、吹き抜け下に飾られた鋼のキューブが連なるオブジェは、ブルガリア出身のラドー・キーロフによる作品。
銀細工の幅広い知識と様々な金属を扱う長年の経験を生かして、ステンレス鋼のシートを手作業で加工する独自の技法を開発。金属の特性を利用して、周囲の環境をダイナミックに映し出し、その反射をマジカルに魅せる印象的なステンレスアートが、ラドーの特徴とのこと。
その他にも、オークション用にと展示してある絵画や、そこここにさり気なく置かれているオブジェなど、アートコンシェルジュ、ラファエラの案内によって船内が美術館さながらのコレクションに満ち溢れていることに改めて気付かされ、楽しませてもらった思いだ。

2022年、新たに就航したリッツ・カールトン・ヨット・コレクションは、洋上のリッツ・カールトンホテルの如く、上質なホスピタリティと今までになかった新しいクルーズライフを体験できる特別なクルーズシップである。
今後、4月中旬から10月頃まで地中海、11月から3月下旬までカリブ海にて最短5泊から最長12泊のコースでの航海が予定されている。また、2024年以降にはリッツ・カールトン・ヨット・コレクションとしての新たなスーパーヨット、イルマとルミナラが就航予定。
客室数228室とエブリマより客室数が少なく、乗客一人に対してクルー1名以上という一層パーソナルなサービスと先進の環境性能と技術を備えた次世代型スーパーヨットをコンセプトに掲げている。
スーパーヨットという新しいスタイルのクルーズライフを体験してみてはいかがだろうか。

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