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ワインと巡る日本の旅【続編】
2020.11.26
DESTINATIONS, WINE

ワインと巡る日本の旅【続編】

WRITTEN BY Makoto.Y, Naomi.T, Mami.H and Hiroshi.K

ワインと人との出会いを求めて各地を巡る”ワインと巡る日本の旅”は、宮崎の都農ワイナリーにてコンプリート!のはずだった・・・が、その後、好奇心と共に思い出したように身近にあるワイナリーを回るうち、それぞれの場所において魅力再発見とも言うべき感動と出会いがあった。改めて思うのは、「日本ワインの魅力は奥深い」ということ。

今回訪れた4つの場所は、言わば日本海が育むブドウ”と生きるワイナリー。ワインと巡る日本の旅”【続編】をお届けします。

セイズファーム

ブドウの摘み取りが終わって、ブドウの葉が色鮮やかに紅葉しだした頃、日本海側に位置するワイナリーの一つとして、富山県の氷見にある”セイズファーム”を訪れた。

目の前に広がるブドウ畑越しには、青い富山湾の海と氷見市街、そして雄大な立山連峰が一望でき、ワイナリーはそんな風光明媚な風景の丘の上に佇んでいる。この日は快晴の天気だったため、風にそよぐブドウの葉も陽があたりキラキラと光り輝いていた。

ワイナリーの場所を決定するにあたり、本来なら土壌や気候の綿密な調査を行った上でブドウ栽培を始めるところだが、一番の決め手となったのはこの景色だったと言う。
そして何よりセイズファームは、ワインとは何の関係もない氷見のある魚問屋がゼロから始めたという、とてもユニークな成り立ちのエピソードを持つ。「知らないから出来た。」とは、案内をしてくれた農園長の山崎さんの言葉だ。
魚しか扱ったことがなかった山崎さん自身も、急遽ワイン造りの道に転身することになり今ではすっかり農園長としてワイナリーの顔になっているから驚きだ。素人だったからこそ、決して条件が良いとは言えないこの場所で、躊躇なくスタートできたのだろう。

2008年にブドウ栽培を始め、ファーストヴィンテージができたのは2011年。9回しかワイン作りができていないから、まだまだ試行錯誤の段階だと言う。
氷見の魚問屋が「氷見でワインを作りたい」と始めたワイナリー。ゼロから氷見で育ったブドウを生かすために、樽もすべて新しいものを使用。氷見の魚に合うスッキリと爽やかなワインに仕上げるために敢えて樽の香りを付けすぎない。ALL氷見にこだわった、ここでしかできないワインへの信念とプライドが感じられる。
ドメーヌのように完全自社栽培・醸造にこだわり、シャルドネ、ソーヴィニヨンブラン、アルバニーニョ、カベルネソーヴィニヨン、メルロー、ピノノワールのブドウの品種を栽培しているが、ワインはすべてブレンド無しの単一ワイン。ブドウ品種本来の豊かな味と香りをダイレクトに堪能できるワインでもある。

敷地内のレストランでは、氷見の新鮮な食材を、氷見で作られたワインと一緒に食す、という何物にも代えがたい贅沢を味わうことができた。2015年には1日一組限定のコテージのような宿泊施設も併設。可愛らしいヤギや鶏が飼われ、将来は果物の摘み取りも体験できるようにしたいという事で、リンゴや洋ナシのル・レクチェなどの果物も栽培し始めている。
セイズワイナリーではなく、「セイズファーム」の意味が理解できた思い。
日本の里山とは思えない、まるで海外のドメーヌを訪れたかのような景観と雰囲気。それが不思議と氷見の景色とこれ以上ないほどマッチしている。地元とのつながりを大切にする造り手の熱い想いが感じられた訪問となった。

ハイディワイナリー

石川県輪島市門前町、禅の里に建つ“ハイディワイナリー”。世界農業遺産に認定された自然豊かな奥能登の山懐に抱かれ、海を一望する丘陵にブドウ畑が広がる。潮風が吹き抜ける、日本海側で一番海に近いワイナリーである。磯の香り、塩分、海のミネラルの風味を含む、この土地らしいブドウが生まれている。
ブドウ畑の隣には、醸造所と見晴らし抜群のレストランを構えている。
横浜で生まれ育ったハイディワイナリー代表で醸造家の高作さん。海と里山に囲まれたテロワールに惚れ込み、ここへ移り住んだという。知り合いもいない土地で2012年の春、妹さんと二人で畑の開墾からワイン造りへの挑戦が始まった。除草剤や化学肥料は使わない土づくりや、ブドウにストレスをかけない手摘みでの収穫など、自然に寄り添った高作さんのワイン造りのこだわりに共感し、地元の協力者が集まり始めたとのこと。

ワイナリー設立翌年の春先、苗木を1000本増やすことにしたものの、北陸の長い冬の中にあって悪戦苦闘だったところ、植樹の手伝いを引き受けてくれたのが同じ地域にある曹洞宗のお寺、總持寺祖院の修行僧達だった。そのご縁をきっかけに、お寺より申し入れがあり特別にワインを醸造したところ、好評となりすぐに完売。その後そのワインは、【相承】のロゴを刻んだオリジナルワインとなり、總持寺御用達の称号を受けて毎年醸造を行っていて、ハイディワイナリーでも人気のワインとなっている。お寺とワイナリーのコラボレーションとは実に珍しく面白い組み合わせである。

「相承」とは總持寺の特別な法要のテーマに由来していて、教えを伝え継ぐという意味があるらしい。200年、300年と続くワイナリーを目指すハイディワイナリーに相応しいワインで、それこそが高作さんの思いそのものだ。

海のミネラルを感じる味わい深い白の「相承」キュベメモリアルは、魚料理との相性は抜群。背後に広がる水平線を眺めながら、相承の名が示す通り、これから続く未来に思いを馳せるひと時だった。

カーブドッチ&

ワイナリーステイ トラヴィーニュ

収穫と仕込みがすっかり終わった11月上旬、新潟県角田浜を訪れた。ここを訪れた目的は一つ、2019年にオープンしたばかりのカーブドッチが運営する“ワイナリーステイ トラヴィーニュ”に泊まるため。

正面に角田山とヴィンヤードをのぞむ欧風スタイルの宿泊施設は、日本で初めてのワイナリーオーベルジュと呼ぶに相応しいオシャレな佇まいだ。
チェックインは、ウェルカムワインと共に暖炉のあるリビングスペースにて。フロントらしきものもなく、まるで邸宅に招かれているような気分だ。

ぺんぎん、あなぐま、いっかく、むささび・・・それぞれ小動物の名前が付けられたゲストルームは全10室で、動物の名前はそのままカーブドッチの醸造責任者である掛川氏が手掛けるプライベートラベルの名前に由来している。

木の温もりが感じられる落ち着きのある空間は、シンプルで実に居心地が良い。ワイングラスを片手にテラスに出て、海風を感じながら目前に広がるアルバリーニョのブドウ畑を眺めて夕暮れ時を過ごした。

 

トラヴィーニュ滞在中のハイライトは、何と言っても隣接する“レストラン トラヴィーニュ”でのワインペアリングディナーである。地元の食材にこだわり抜いた佐藤シェフ自慢の季節のおまかせメニュー10品と組み合わせるのはカーブドッチの8種類のワイン。

ここまで風土を表現した食事とワインのマリアージュは記憶にないくらいに感動的だった。料理に合うワインをあてがうのではなく、ワインの個性を確認しながら料理を創作すると聞いて妙に納得。

その土地の食材は同じ風土から生まれたワインと合わないはずがないということも改めて教えられた思いだ。食事の後はバーカウンターでデザートワインを楽しみつつ、とことん風土に拘ったトラヴィーニュのもてなしに酔いしれた夜だった。

 

天然温泉に浸かり、ブドウ畑に囲まれて迎える朝もまた格別。

自家製のハムやソーセージ、天然酵母のパン、そして地元契約農家から取り寄せたフルーツや野菜、ジャム、バター、卵、牛乳といった上質な素材だけを使って作られるトラヴィーニュの朝食は、正しく”新潟の美味しい朝食”そのままで、自然の優しさが感じられるシンプルながらも贅沢な朝食だ。

海岸線からわずか1キロの角田山麓のふもとに、カーブドッチが創業したのは1992年のこと。その後、カーブドッチを中心に5つのワイナリーが誕生し、今や日本の砂地土壌におけるワイン造りのノウハウの集積地として新潟ワインコースとまで呼ばれるようになった。

水はけが良い代わりに、栄養分が乏しいのが特徴で、昼は海から、夜は陸地から一年中風が吹く場所。掛川氏曰く、栽培が容易とは言えない環境で多品種を試したところ、2005年から栽培してきたアルバリーニョが砂質土壌に最も合うのではないかという一つの結論に達したとのことで、今やアルバリーニョはカーブドッチを代表するワインとなった。そしてそのアルバリーニョにリースリング、セミヨン・ヴィオニエをアッサンブラージュし、より砂のニュアンスが感じられるようにと造ったのがフランス語で砂を意味する「サブル」。口に含むと、まるで砂に水が吸い込まれるように抵抗なく体に染み入る優しい味わい。ディナーでは、南蛮えびのタルタルとのペアリングだったことを思い出し、しばし余韻浸るひと時。

自家製ビールとハム・ソーセージのカジュアルレストラン「薪小屋」、焼きたての自家製酵母パンが味わえるベーカリーカフェ「ココアコテ」といった施設も充実していて、センス溢れる雑貨が豊富なワインショップは見ているだけでもわくわくする。

トラヴィーニュの誕生は、国内においてのユニークで画期的な”ワインリゾート”の提案と言えよう。想像を超えた滞在は、まさに身近場所で宝物を見つけた思いだ。

金沢ワイナリー

観光地のすぐ近くに金澤町家のワイナリー?

2018年10月、有機栽培農家として知られる「金沢大地」の井村辰二郎氏が、金沢の市街地に一階はワイナリー、二階は地場の有機食材を利用したフレンチ農家レストランというユニークな“金沢ワイナリー”をオープンした。

“消費者と強く結びつきたい”。井村氏は有機農業でお米と麦、大豆を生産し、地域の商品と相性がいい日本酒を地元の酒造と協力して製造してきた。そんな時、米も麦も育てられない痩せた能登の耕作放棄地で、何か出来ないかと思い至ったのがブドウだった。ワイナリーはこれまで生産してきた有機野菜のテロワールの表現にもなる。お客様を一年中お迎えできるように、ここから能登にも興味を持ってもらえるように、金澤町屋のワイナリーは“ワインツーリズム”の広い間口になると考えた。ハイディワイナリーも金沢市内に「ワインショップ×カフェ×ワインバー」をテーマとしたショップがあるが、日本ワインをもっと身近に感じてもらいたいという、生産地やワイナリーの強い思いが込められている。

金沢ワイナリーの二階で楽しめるカジュアルフレンチ“A la ferme de Shinjiro”で腕を振るうのは、ブルゴーニュのミシュラン星付きレストランなどで研鑽を積んだシェフ満田浩さん。
「金沢大地」の有機農産物や地元の旬の食材を活かしたフレンチと、金沢ワイナリーのワインとのマリアージュを楽しむことが出来る。食事中、その日の野菜・食材の内容が細やかに記された手紙が。
加賀・能登のテロワールにこだわり抜いた食事とワインの愛称は抜群で、町家が醸す空気と合わさり、どこか温かな気持ちにさせてくれた。

この建物は大正期の金澤町家を改修して作られており、注目はその壁。穴水の赤土、珠洲の珪藻土、河北潟のたい積土を用いた地元の左官職人の技術を見ることが出来る。食事・ワインそして町家と、五感で地元のテロワールを体感できるのが最大の特徴だ。そしてうなぎの寝床のような奥に長い町家の構造は、井村氏がひとりで醸造を手がけるワイン造りの行程にもマッチしている。このワイナリーの特徴は室内温度が10度程度に保たれた温度管理にあり、ジャケットと呼ばれる最新の設備を備えたステンレスタンクは注入する水の温度で発酵の促進・抑制を可能にする。古き良き町家の中に最新技術が備わっている様子は非常に面白い。まだまだ小さいワイナリーで、実際に商品化できる数量は4500ℓ程度とのこと。石川のワインツーリズム・ガストロノミーツーリズムの身近な玄関口として、これからの進化が期待されるワイナリーだ。

身近な日本海側のワイナリーを訪ねて思ったのは、まさに灯台下暗し。

造り手の情熱はもちろん、良いワイン造りには切っても切り離せない風土の大切さを改めて考えさせられる旅となった。その土地で空気を感じ、そこで出来たワインと食材を堪能する地産地消。これが何よりのペアリングであり、“ワインも食事も生まれた土地で頂くに限る。”との答えにたどり着く。明治初期に本格的なワイン醸造が始まったとされる日本のワインは、150年かけて日本の風土によって育まれ、今では全国300か所においてそれぞれの個性的な花を咲かせている。上質なワインと美味しい食事、そして人との出会いを求める旅の醍醐味は、何も海外に限ったことではないということを感じさせられた。

「やっぱり旅は素晴らしい!」と、日本のワイナリーを巡るなかで改めて実感させられることとなった。

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